蝶人戯画録

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ガルシア・マルケスの「族長の秋」を読む


降っても照っても第30回
 
言葉、言葉、言葉…。

大きく逸脱し乱反射する豊饒なビジョンを、酔っ払った大脳前頭葉が猛烈な勢いで追走し、追いついた時点で次々に自由奔放な言葉に置き換えられる…。それが「族長の秋」でマルケスが発明した書き方だ。

ここで100年を超えてしたたかに生き延びる現代のミノタウロスに成り変ったマルケスが見せ付けるのは、腐敗堕落した政治権力の、いや老醜無残な人間の生き方の末路そのものではないだろうか? 

最新流行のHOWについて喋喋せずに、太古から現代の人間史、宇宙史の根幹を貫くWHATについて滔々と語りつくす著者の力業にしばし心うたれる。