蝶人戯画録

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マイケル・パウエル監督の「うずまき」を見て

kawaiimuku2011-10-09


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.155

これは1945年製作の英国映画で、話も面白いがそれよりも第2次大戦を戦いながらよくもこういうスリルとサスペンスに富んだ奇想天外な冒険恋愛映画をつくったものだと感心する。

アメリカもフランスもそうだが1945年製作の日本映画が成瀬巳喜男の「三十三間堂通し矢物語」と黒沢の「続姿三四郎」くらいしかまともな作品がないのと比べると、1946年の「天井桟敷の人々」、1948年の「自転車泥棒」といい1941年の「市民ケーン」といい本作といい、やはりかつての西欧映画大国の映画力の底力は物凄いものがある。

「うずまき」は25歳のロンドン娘が大富豪と結婚することになり、彼が待つヘブリデス諸島のキーロン島に向けて旅立つが、荒天と新たな恋人の出現にさまたげられ、結局はキーロン島へは行かずにハッピーエンドとなる。

またこの映画には、アントワーヌ・ヴァトーの代表作「シテール島への船出」やエドガー・アラン・ポーの短編「メールシュトレームに呑まれて」の引用がなされているようで興味深いものがある。

11年シャンパンファイトを知らざりし背番号51の秘かな哀しみ 蝶人