蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

さらにばかばかしいことを書いてみたくて


バガテルop150


こないだ朝から舌が痛くて痛くて仕方がないのであんぐり開いてみたら真ん中にオデキのようなものが出来ていた。てっきり舌ガンではないかとおそれおののいた私は早速中原中也が死んだ清川病院の隣にあるT耳鼻咽喉科まで自転車を飛ばしてかけつけた。

東急ストアで1万円で買ったこの紅い自転車は夕方になると電灯がつくので私はえらく気に入っていたんだが、先日彼女(自転車のこと)と共に細君が階段下に転落して骨を折ったり、その後も駅前のハックの前に停めておいたら違法駐車だというのでトラックで持って行かれ、北条氏終焉の東勝寺腹切り矢倉まで歩いて行って大枚1000円払って取り戻したばかりなのだが、自転車狩のおじさんにまた持っていかれては困るので、医院の駐車場に正しく駐車した。

医師いわく。ガンではないから安心しなさい。しかしこれほどひどいザクロのようにただれた舌は見たことがない。原因はおそらく慢性炎症か細菌かカンジタなどの真菌のせいだろうが、歯のかぶせの金属アレルギーによるものかもしれない。細菌検査をしておきますから1週間後に来なさい。金属アレルギーについては懇意にしている歯科医師に紹介状を書くからいってみなさい。というので大町のK歯科を訪ねた。

そこは完全予約制になっているのですぐには診ることができない。出直して夕方来なさいというので6時半に行くと余の歯が老朽化していてところどころギザギザがありこれが歯を傷つけている可能性がある。すぐに丸くしませうというので、ちょっと待ってくれ。T医師は歯のかぶせの金属アレルギーがあるやもしれぬと言うたのだから、その嫌疑を晴らしてほしいと要求すると、それは大きな総合病院で大がかりな検査をしなければできないというので、結講毛だらけ猫灰だらけと一礼してとっぷりと暮れた闇の中を自宅へ急いだ。

T医院で3千円余、K医院で2千円余、〆て6千円余のお金と晴天の丸1日を費やして余の得たものはわずかであったが、舌ガンの脅威が去ったのはなによりのことでした。


ウンコとオシッコはしようと思えば同時に出来るものなり 蝶人