蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2012年師走 蝶人狂歌三昧

kawaiimuku2012-12-31



ある晴れた日に 第119回



十二月八日を吹くや猛き風

一枚の落ち葉となりて犬踊る 

一陣の疾風となりて犬走る

バーキンの頬柔らかしクリスマス

冬晴れや死票投じる総選挙

世の中はいかになるらん冬の朝

冬北斗一票の重さ比類なし

孤老死す皇帝ダリア植え終えて

凩や日中戦力を比較する

冬空の見おろすプールやバタフライ

願いより疾く流れゆく冬の星

玉虫を尋ねて今日も三千里

冬の朝ハワイに着きし瓦礫かな

私はゴキブリをゴム輪鉄砲でぶっ殺す名人ホイサッサ

ウレピーナ楽しいなニッポン全国ウヨクがウヨウヨ

ああ亡羊茫洋すべての人は通り過ぎて行く

待ちわびた新車ようやく店に着き白きアクアで妻と帰りぬ

健くんが川へ投げたアオダイショウよ流れ流れていずこへ行きしか

弾丸を噛みつつ政治も成熟す羹に懲りて膾吹きし人も

主よ人の望みの喜びよわが心に流れる一筋の川よ

天気晴朗なれど何事も無く暮れたり十二月八日

口にテープ手に丸太足を縛られ殺されしひと 

北条に睾丸切り取られて絶命す二大将軍頼家哀れ

家々に皇帝ダリアを植え終えて在所の山に縊れたるひと

死してなおシベリウスについて語りおり吉田秀和「名曲の楽しみ」

君はどんな目に遭ったのと尋ねてもただ手を舐めるだけ被災地からの犬

ポカンポカンと頭を西瓜のように叩いているもうやめてくれえ

鎌倉ざーます婦人は「紀ノ屋」ビンボー人のおいらは「鎌万」に行く

原宿の竹下通りでごろつきに顔殴られたルネ・コロいたまし

青渡岸寺より熊野灘目指し漕ぎ出ずる補陀洛渡海維盛の船

生きたまま入定されし空海の奥都城に舞う高野山の霧

十津川の流失家屋を眺めながら「観光に来て頂くだけで元気になれます」と語るガイド

だんだんと中国と戦争してもいいような気になる自分が怖い

私は日本の桃太郎尖閣竹島もみんなあなたにあげましょう

今日もまた「行方不明者が出ました」と市の拡声機が叫んでる

三〇〇〇円のごみ箱を買うか買うまいか一か月も迷っていた建築家ミケーレ・デ・ルッキ

ののへいはクライアントの言うことをみな聞く駄目なデザイナー

デザイナーがクライアントの言うことをみな聞いてどうするんだ

鏑木清方は日本のアンリ・ルソーいつも江戸の春に遊んでるよ



大晦日生きてしあればそれで良し 蝶人


 1年間のご愛読ありがとうございました。皆さまどうぞ良いお年をお迎えください。