蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ジョン・フォード監督の「シャイアン」を見て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.524

 

本邦では西郷隆盛をみこしに担いだ西南戦争が戦われていた頃、アメリカでは先住民に対する最終処分が酣となって勇猛夢想を謳われたシャイアン族が政府との約束を反故にされ、食うや食わず、生きるか死ぬかの危急存亡のときを迎えていた。

 

御大ジョン・フォードは保護地区に押し込めたシャイアン族を管理する騎兵隊の大佐リチャード・ウィドマークの眼を通して、先住民を徹底的に追い詰める傲岸不遜な征服者と、滅びゆく孤高の戦士集団の哀しい運命を単なるインディアンやっつけ西部劇ではなく、時代的必然の中での悲劇として重層的に描いている。

 

迫害されるシャイアンの同伴者として逃避行をともにする心優しきクエーカー教徒キャロル・ベーカー、最後に救いの神のように登場する司法長官のような奇特な人が本当にいたのかどうかは分からないが、そういう夢のような存在にフォードが仮託したなにかを読み取ることはたやすいだろう。

 

なかなか面白い一挿話の中でダジシティの保安官ワイアット・アープ役で登場したジェームズ・スチュアートがいい味を出している。

 

大いなる山を潰して聳え立つすべての墓に夕日差したり 蝶人