蝶人戯画録

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サム・ペキンパー監督の「ワイルドバンチ」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.530

 

大いなる夢と野望の若き日はたちまちにして夕日の如く傾き、人生の残照身にしむ老残の時を迎えた群盗たちが迎えた最期のドンドンぱちぱち。さながら夏の夜の夢の花火大会のように盛大に描かれている。

 

本作ではひょんなことから知り合ったメキシコ人の若者を救うために、たった四人のならず者が無数の兵隊を向こうに回して、いとも軽々と一命を投げ出すことになるのであるが、これはいったいどういう風の吹きまわしか。

 

革命の動乱のただなかにある若きメキシコへの羨望? 一宿一飯の恩義どころか金儲けに目がくらんだ群盗たちの胸中に宿した一瞬の侠気と友情? 死中に活を求め死花を咲かせようとする狂気と諦念?

 

いずれにせよペキンパーの魂の内部には、死への衝動とあこがれがあったのであり、それが本作にも強烈に反映されている。

 

この映画を見るたびに思い出されるのが、かのテニスンの「死地に乗り入る六百騎」の勇壮な詩の調べ。私もできれば彼らのようにてんで恰好良く死にたいものである。

 

 

 

行き生きて地獄の果てに花もなしここで西部も人生も終わる 蝶人