蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

アンソニー・マン監督の「グレン・ミラー物語」を観て

 

 

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.542

 

タイロン・パワーが主演したピアニスト、デューチンと同様、ジェームズ・ステュチュアート扮する主人公も哀しい結末を迎えるという点では共通している音楽映画です。

 

前者ではショパンの夜想曲が、ここでは「インザ・ムード」や「ムーン・セレナード」などお馴染みのスゥイング・ジャズの名曲がじつに効果的に挿入されています。

 

主人公のお相手は、前者では私の大好きなキム・ノヴァク、本作ではジューン・アリソンとかなり差がつきますが、前者の監督がジョージ・シドネイーという凡才、後者はアンソニー・マンなのでその差をたちまち取り返します。

 

そうして名匠アンソニー・マンは、最後にグレン・ミラー編曲による「茶色の小瓶」をクリスマスを祝うパリからのラジオ放送で聴かせ、観客の涙を誘うのでありましたあ。

 

 

油蝉喨々と鳴く真昼かな 蝶人

 

 

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