マルセル・カルネ監督の「歎きのテレーズ」を観て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.387
エミール・ゾラの原作「テレーズ・ラカン」を名匠マルセル・カルネが演出した往年の名画で、主人公の男女が追い込まれていく悲劇のどうしようもない破滅的な成り行きをシモーヌ・シニョレとラフ・バローネが好演している。
この映画の頃は、脚も奇麗だし、ほのかな色気が画面の外まで漂うようですべてが好ましい。モンタンもそこに惚れたのだろう。しかし年齢を重ねたシニョレは顔も体もぶっちゃりと肥って、ヤクザの姉後などを演じると凄味があったが、とても若き頃とは同一人物とは思えない。
エリザベス・テーラーの晩年も無惨なものだったが、若き日になまじ美貌を誇った男女であればあるほど、歳を経て醜く老化したおのれの姿を素直に受けいれることが出来ずに苦しむのではなかろうか。
その点普通の容貌に恵まれた我等はそのことだけでも神様に感謝すべきなのだらう。いずれにしてもこの映画の衝撃的なラストは、いかにも映画的であり小説的だ。
あらくれの三浦一族屠腹せし頼朝公園子ら駆けまわる 蝶人