蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

鎌倉文学散歩―長谷方面―に参加して

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茫洋物見遊山記第151回 &鎌倉ちょっと不思議な物語第317回

 

 

恒例の春の文学散歩に参加して長谷方面を歩きました。今回は高徳院の大仏様、川端康成邸のすぐ近所の甘縄神明宮、稲瀬川周辺を経て鎌倉海浜ホテル跡までの短い半日コースです。

 

鎌倉大仏の後ろには例の与謝野晶子

 

かまくらやみほとけなれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな

 

という歌の碑が立っています。実際は阿弥陀如来なのでのちに改めたそうですが、本歌のキモはその後の七七にあるので別に釈迦でもむにゃむにゃでも宜いのではないでせうか。

 

その近所をよく探すと、星野立子さんの

 

大佛の冬日は山に移りけり

 

という句碑もありましたが、いかにも虚子の娘らしい花鳥諷詠の一句で、お父さんの

 

遠山に日の当たりたる枯野かな

 

という有名な句に、どこか相通じる世界だと思いました。

 

それより興味深かったのは江の電の長谷駅から坂の下の海岸に向かう途中のボートハウスです。

 

ここは詩人萩原朔太郎が病気療養のために大正五年から六年にかけて滞在した海月楼の跡地で、彼の第一詩集「月に吼える」の刊行準備がなされた場所だそうです。

 

また同じ詩人の日夏耿之介もやはり同じ時期に病気療養のためにこの近所に住んでいたそうで、私の好きな二人の詩人が同病相哀れみつつ、この海辺で親交をむすんだのかと思うと、なかなかに感慨深いものがありました。

 

 

なにゆえに飛車を打つ手がぶるぶる震える羽生棋士が勝利の軌跡を確信したから 蝶人