蝶人戯画録

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杉田成道監督の「最後の忠臣蔵」をみて

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bowyow cine-archives vol.720

 

 

 討ち入りから16年。赤穂浪士の生き残り・寺坂吉右衛門と瀬尾孫左衛門をめぐる後日談。池宮彰一郎の原作を杉田成道が演出して、それなりに格調高い映画に仕立てている。

 

 大石内蔵助足軽、寺坂は当日の討ち入りに参加しながら泉岳寺には集結しなかったが、これを大石の命で後事を託されて逐電したとみなし、瀬尾もまた大石が山科の妾に産ませた娘の世話で一味からはなれさせたと仮説をたてる。

 

 が、前者は公的な使命ゆえ充分ありえたと思えるが、後者はあまりにも私的な後始末なので、いくら映画とはいえ信憑性に欠ける。

 

 杉田成道の「優駿」は見るに堪えない駄作だったが、本作では殊に「間」を大事にした演出が効果的で、役所工事、佐藤浩市の熱演も相俟ってなかなか重厚な仕上がり。

 

が、最後の残酷腹切りシーンは別になくてもよろしいでしょう。

 

 

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