蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

国立劇場で「双蝶々曲輪日記」千穐楽をみて

f:id:kawaiimuku:20141027114456j:plain

茫洋物見遊山記第155回 

 

『双蝶々曲輪日記』と書いて「ふたつちょうちょうくるわにっき」と読ませるとはなんとお洒落な江戸の文人よ。雅号「蝶人」を名乗る者としてはなんとしてでも東京にイカナバナラヌウということで国立劇場千穐楽を見物して参りました。

 

 国立劇場のホームページによれば、この義太夫狂言の内容は以下のごとし。

 

 作者は『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』を生み出した竹田出雲・三好松洛・並木千柳の名作トリオ。 題名の「双蝶々」は、濡髪長五郎と放駒長吉、二人の力士の名前にある「長」の音を取り入れたものです。 


 今回は濡髪を中心とした構成で、見応えのある通し上演でご覧いただきます。義理と人情との間で葛藤する濡髪や周囲の人々によるヒューマンドラマが展開します。


 序幕「新清水」は久々の上演。豪商山崎屋の若旦那・与五郎は、遊女・吾妻と深い仲。吾妻に横恋慕する平岡郷左衛門によって窮地に陥れられますが、吾妻の朋輩・都と相思相愛の南与兵衛が救います。


角力場」では、山崎屋の贔屓を受ける濡髪が、郷左衛門に荷担しようとする放駒に勝ちを譲り、与五郎への力添えを頼みます。名力士の濡髪と素人相撲の放駒の意地と意地とがぶつかり合う一幕です。


 二人は「米屋」で再び争いますが、弟の放埓を案じる放駒の姉・お関の苦肉の策のお陰で、義兄弟の契りを結びます。


 しかし、「難波裏」で、濡髪は郷左衛門とその仲間をやむなく殺害。そして、実母のお幸に一目会おうと尋ねる「引窓」へと続きます。お幸は与兵衛の継母でもあります。濡髪、与兵衛、与兵衛の女房となった都(お早)、お幸―四人が互いの心中を察して苦悩する姿が、屋根の明かり取り〝引窓〟を効果的に使って描かれます。


 幸四郎が当り役の濡髪を、半世紀ぶりに三幕通して演じます。また、染五郎が与兵衛・与五郎・放駒の三役を勤める楽しみな舞台。さらに各役に魅力溢れる顔触れを揃えました。芸術の秋にふさわしい名舞台を心ゆくまでお楽しみ下さい。

 

 と、書かれている通りの舞台であったが、幸四郎親子の幸福感みち溢れる共演に加えて、中村東蔵の好演が印象に残った。

 

 

   わが子ながらやるではないかと称えつつ幸四郎は見得を切りたり 蝶人