蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2014年神無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に 第263回

 

 

桜の樹のどこいらで鳴いているのか油蝉昔よくオシッコをひっかけられたが

 

雨空に一筋の光差し込めば一斉に鳴き始める蝉たち

 

キャンパスに蝉声響動もす昼下がり生涯最後の授業終えけり

 

今年は平成何年なるか時々分からなくなる天皇制ってそれくらいのもの

 

お前さんが攻めてくるならこちとらだって黙ってはいないぜ全世界中で気分はもう戦争

 

可もなくて不可もなきこの世の中を可もなく不可もなき人過ぎる

 

シオカラの雌がムギワラトンボだなんて皆さんご存じでしたか?

 

取るべきか取らざるべきか迷う日々僅かに太る裏庭のミョウガ

 

草花の名前を聞けば答えありわが妻こそは歩く植物事典

 

我こそは「歩く昆虫事典」と自負すれど妻の植物事典には厚さで負ける

 

「お母さん、お母さん」と息子が大声で叫びたれば妻は意識を取り戻したり

 

「お父さん自閉症って何?」と自閉症の息子が尋ねる誰か上手に答えてやってくれ

 

2014年7月1日に戦後終わり憂鬱なる戦前が始まった

 

足元にまつわりつくなよルリシジミゴミを出すのに邪魔になるじゃんか

 

 

わが子ながらやるではないかと称えつつ幸四郎は見得を切りたり

 

胸押せばもの凄き力で押し返す死に物狂いの蝶のあがきよ

 

太るのは自己抑制が効かないでおのれが豚豚になることを許すから

 

青空にひつじ雲が浮かんでる今日は死ぬにはかなり良い日だ

 

世の中はあれからどんどん悪くなり「よきこときく」ひと少なくなれり

 

僕らオクラ食べても食べても五つ星オクラらはいまはまからむ子泣くらむ

 

さる宮のさる皇女けふ嫁ぐらし与り知らぬ遠き世界で

 

もうええわ、わたしおとうちゃんとこいきたいわというて母身罷りき

 

プルトニウムがよおプルトニウムが47トン これさえあれば核兵器できる

 

69の時はローリング・シクスティなどとイキがっていたが明日から70時間よ止れ

 

ようやく白地に緑のペンキ塗りも終わったこれで妻の病気さえ治ってくれればいいのだが

 

絶叫する通販男に対抗するには気力体力忍耐力が必要

 

とある日とある街でさりげなくそれは起きるだろうあらゆる戦さがそうであったように

 

あまりにも暑いというより熱いので、生きていることを忘れてしまう

 

ひとつ池で育ちゆくなり蝌蚪子蛇

 

蝉声絶え三千世界秋となる

 

列島に烽火点点曼珠沙華

 

富士山の彼方此方に君と僕

 

大いなるふぐりのありてペンキ塗り

 

五人組ゆえ騒動起こす鴨仲間

 

蟷螂が発条晒して死んでいる

 

右翼紙への投歌を廃す神無月

 

 

  短歌なぞ詠んでる暇はありませぬ毎日どんどん人が死んでる 蝶人