蝶人戯画録

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鎌倉文学館の「山崎方代展」をみて

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茫洋物見遊山記第158回&鎌倉ちょっと不思議な物語第324回

 

 

 鎌倉文学館では12月7日まで「生き放題、死に放題、山崎方代の歌展」が開催されています。 

 

 昔からほんのひと握りの人にしか知られていなかったこの繊細な野人の歌が、大勢の人々に知られ、親しまれるようになったのは歓迎すべきことです。

 

  夕日の中をへんな男が歩いていった俗名山崎方代である

 

 などと自己規定しておりますが、別に親が「生き放題、死に放題にせよ」と命名したからというて、そのように生きられるものではありませぬ。

 

 彼が詠んだ歌は、彼のユニークな個性や生き方とは無関係に、「そうしか生きられないこの世での生態」を素直に反映したものであり、それはわたしら凡人とまったく同じ道行きでありました。

 

 生きるも死ぬも、この時ぞ。この時ぞ。

 

 という中原中也のリフレインが、どこか秋の空の彼方にむなしく響いているような気がする展覧会でした。

 

 たくさんの原稿や短歌が並んでいましたが、色紙に書かれた字はあまり私の中の山崎方代らしからぬ筆跡です。筆を握ると、ペンを持つよりその人の人間が出るもの。みだりに色紙に筆を走らせてはならぬ、と思わせられたことでありました。

 

 なお会場のそばのバラ園では、二度咲きのさまざまな薔薇が色鮮やかに咲きそろい、秋空をうつくしく彩っておりました。

 

なお本展は来る12月7日まで同館にて開催中。

 

 食い放題飲み放題の中華料理屋に通ってた生き放題死に放題の男方代 蝶人