蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

駆込み訴え その3~「これでも詩かよ」第113番

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ある晴れた日に 第266回&鎌倉ちょっと不思議な物語第325回

 

 

鎌倉市河川および相模湾における天然ウナギの捕獲を禁じ、違反者を厳しく罰すべし」

 

 今年2014年の6月、国際自然保護連合レッドリストに、ニホンウナギ絶滅危惧種として挙げられたことは周知の通りです。

 

 この主たる原因は、わが国が、ウナギの稚魚(シラスウナギ)を長年にわたって乱獲してきたからです。

 

 捕獲されたシラスウナギは、養殖されて成魚となり、毎年土用の丑の日などに大量に消費されますが、残念ながらまだ完全な養殖システムが完成されていないために、これら「養殖うなぎ」の原材料となるシラスウナギは、依然として天然資源に頼っているのです。

 

 そこで今年9月には日本政府が呼びかけ、中国、台湾、韓国が参加した「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第7回非公式協議」が開催され、各国が共同してニホンウナギの絶滅を防ぐための調査や資源管理を行なっていく決意を表明しました。

 ところで当市の滑川には、昔から天然ウナギが生育し、かつて小町にはウナギ漁師も存在していました。しかしそれは70年代の河川環境の悪化によって激減し、一時は絶滅したかに思われましたが、近年の環境改善に伴い、きれいになった滑川に相模湾から遡上する天然ウナギの個体数も少しずつ増加しています。

 

 おそらく彼らは、これも増加しつつあるアユを追ってきたのでしょう。

 

 ここ数年、彼らが滑川で泳ぐ姿を愛でる人も増え、中には毎晩遠方から見物にやって来たり、写真を撮ったり、「ウナジロウ」などと名前をつけて喜ぶ人(私ですが)も現れました。

 

 ところがそんな“麗しきウナギ愛”を抱く人々の気も知らず、この愛すべき絶滅危惧種を、自己の放恣な享楽のために、罠を仕掛けたり釣って料理したりする連中も増えてきたのです。

 

 昨年の夏、私が毎晩交流してきたウナジロウを除く天然ウナギ一家のウナタロウ、ウナコ、ウナサブロウが彼らの血祭りに挙げられた怒りと悲しみ! 

 

 それは、絶滅危惧種の絶滅に対する怒りと悲しみ以上のものでありました。

 

 鎌倉市と市長は、これら絶滅危惧種の保護と繁殖を目指す世界的な気運に逆らい、公共の利益よりも私利私欲を肥やそうとする野蛮人の非人道的な暴挙を、この際断固として阻止すべきではないでしょうか?

 

 時は一刻を争います。可及的速やかに当市河川、相模湾における天然ウナギの捕獲を禁じ、違反者を厳しく罰する法令を定めて頂きたいと存じます。 

 

 右、強く要望致します。

 

 

ただ一尾川に残りしウナジロウ亡きウナタロウ、ウナコ、ウナサブロウのため生きながらえよ 蝶人