蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2014年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧

f:id:kawaiimuku:20141026141119j:plain

 

ある晴れた日に第271回

 

 

小学生が赤と青の旗を振っているサラ・ブライトマンのTime to say good byに合わせて

 

若くして死んでしまった中川安奈そのアルト聴く雨の水曜

 

新しい標札をつけたがわずかに右上がりあえて直さずこれでいいのだ

 

キリコ、キリコ、霧子デ・キリコ いまでも死ぬほどお前を愛してる

 

イチローが初ホーマーで黒田に勝利をプレゼントそんなまさかならいつでも歓迎

 

きのうきょう何ひとつよきことなけれども紅白のサザンカふたつ咲きたり 

 

管公の恨みは深しいまもなお国宝館に漂う霊気

 

ちょいと出ましたテングとエボラ驕る我らにお灸を据えんと 

 

世界中に蝶の生まれ変わりが散らばりて蝶よ花よと舞い踊るなり

 

朝顔月下美人も咲きたれど肝心要の蓮が咲かない

 

「WINWIN関係がベスト」などとほざくなかれ俺はお前と戦っているわけじゃない

 

会うたびにかたくわが手を握り締めし菊男伯父にいま一度逢いたし

 

だんまりを決め込んでいたのに突如歌いだすみゅーじかるは傍迷惑なり

 

なんじゃもんじゃこれでも小説かピンチョンは八面六臂の千手観音

 

もうどんなことにも自信がないんですわたし絶対失敗するので

 

アホバカの轟音パンクでこの俺の鼓膜破りしケラ「有頂天」になる

 

さとうさんちのモコは、ウォン、ウォン、ウォーーンと啼く

うちのムクはWANNG!と一声発して地上の星となったよ

 

この世をばやや斜交いに渉りおれば寂しき孤高の人となりゆく

 

意に反し靖国に祀られし英霊よ立ちて歩みて故郷へ帰れ

 

赤赤赤赤赤赤赤赤赤真っ赤な部屋に女が一人

 

「頂戴します」と一礼し両手で名刺を受取りぬさすがは日本男子高倉健

 

どのような詰らぬ演奏にもブラボー男がブラボブラボーなんとかならぬかN響演奏会

 

いますぐにこの場で腹を切りなさい40年自閉症と親を食い物にしてきた商売人たち

 

自閉症の本質を摘出できないアホバカ学者がじつはおいらも自閉症でしたなぞとほざきやがる 

 

コーヒーはブラック煙草はピース万年筆はモンブランの新人コピーライターだったが  

 

薄幸の蒼ざめた佳人が歌っているドデカフォニーのような現代短歌

 

霊園にはおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいるよねと夜中に叫ぶ耕君

 

 

    道端に転がっていた栗の実が今夜の我が家の御馳走となる 蝶人