蝶人戯画録

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三隅研次監督の「女系家族」をみて

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bowyow cine-archives vol.737

 

 

ごぞんじ山崎豊子選手の原作を、才人三隅研次監督が折り目正しく描く。

 

女系制度は古代から中世の鎌倉時代まで脈々と本邦に流れていた経済社会政治制度であるが、我々はこの映画の中で、その最後の光芒を昭和の商都大阪において見物する貴重な機会に接することができるのである。

 

浪速の名家の養婿の三人姉妹の長女を演じるのは京マチ子、次女が鳳八千代、三女は高田美和であるが、あとの二人は京の強烈な存在感の前に完全に霞んでいる。

 

突如真正の遺言状を持って出現し、あぶらげをサラう死んだ父親の若い妾若尾文子のはじめは処女のごとく、終わりはトンビのごとき演技は、悪戦苦闘一敗地にまみれる番頭役の中村鴈治郎、三女を応援する浪花千栄子の秀演ともども忘れ難い。

 

 

旅客機と戦闘機の区別さえつかぬままミサイルの発射ボタンを押すや戦争の犬ども 蝶人