蝶人戯画録

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鎌倉の瑞泉寺を訪ねて

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茫洋物見遊山記第164回&鎌倉ちょっと不思議な物語第329回

 

 

瑞泉寺に行くには自宅から天園ハイキングコースの分岐点を経由して15分もあればその裏山に到着するのだが、今日はそんな裏道ではなく正々堂々と正面から入山する。

 

確かここはシルバー割引で無料だったはずだが、入山料を取られてしまった。寺社仏閣を訪れる連中の大半が高齢者だから、せっかく無料パスポートを貰ったのに、また有料に逆戻りすると厭だなあ。ブツブツ。

 

ぶつぶつ文句を言いながら山門をくぐると、吉田松陰の記念碑や吉野秀雄、久保田万太郎の歌碑や句碑や冬桜、その他なんちゃらかんちゃらが要所要所に配置してあるが、何というても最大の見ものは開祖夢想国師がみずから造作した瑞泉寺庭園であろう。

 

これは後の西芳寺天龍寺の庭園の先がけをなすものだが、それゆえに原初期の初々しさと実験精神が横溢してもいるのである。

 

かつてこの名刹には大下豊道という偉い住職がいて、野生の歌人、山崎方代が訪れるたびに金子を恵んだという。

 

  瑞泉寺の和尚がくれし小遣いをたしかめおれば雪が降り来る 山崎方代

 

 この「たしかめおれば」に歌人の真骨頂がある。

 

 

      瑞泉寺なんちゃらかんちゃら年の暮 蝶人