蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2014年師走蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に第275回

 

へいゴダール! ミエヴィルちゃんの愛犬ロクシーより我が家のムクのほうが役者が一枚上だったよ 

 

おおスザンナ金髪のジェニー夢見る人よすべては終わりぬケンタッキーの我が家

 

エイエイオウ!民衆の敵を打ち倒さむ十二月十四日は討ち入りの日

 

選挙なんか関係ねえよと棄権する粋なあんたの拭かないけつツケ

 

さかしらに棄権なんかしたひとは二人に一人 次回は投票権無しだからね

 

議席減らして沖縄は小選挙区ゼロ勝った勝ったと喜ぶなかれ自民党

 

勝った勝ったぞ万々歳!安倍ちゃんにまかせておけば薔薇色の人世猫も杓子も天国へ行ける

 

この道はいつか来た道愚かなる我らが戦に突き進みし道

 

憲法」とかけて「ケムンパス」と解くその心は「これでいいのだ」

 

藤沢の爽風舎ピーターパンダの食パンは他のどこより美味しいパンだ

 

コーヒーはブラック煙草はピース万年筆はモンブランの新人コピーライターだったが

 

キになるイバラのカバライキン果たして私と関係があるのかないのカバライキン

 

腰かがめ「頂戴します」と言いながら両手で名刺を受取りし健さん

 

冬の朝冷たき風の吹く道を素足剥き出し女子高生が行く

 

極彩色の映画よりもモノクロの映画が心に沁みて

 

てのひらに乗りしひとかけらの小石より果敢なきものは命なりけり

 

世の中でもっとも美しく悲しい曲モーッアルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス

 

草虫を喰い一発の弾丸も撃たずして斃れし人を英霊とよぶ

 

現在のわが生活レベルでは大江戸屋のランチくらいが妥当

 

俳句からこぼれてしまうあれこれをぜんぶ短歌に盛ろうと思う

 

取り立てて面白いことなどないけれどさも楽しげに面白そうに笑っているなり

 

どんなときでも上機嫌だった今は亡き我が家の愛犬佐々木ムク

 

蝶や花を蝶よ花よと褒めそやす生殖のほか生き甲斐なきものを

 

海ハヒロイナオオキイナ一日ニ三百トンノ汚染水ヲ黙ッテ呑ンデル

 

「悲しいほど若かった」と山川啓介が振り返る井出隆夫はスロープ下の部室05にいた

 

夜になり電気も灯らぬあばら屋に一人の男が住んでいるのだ

 

スカ線の武蔵小杉は大混雑日経平均もっと揉み合え

 

旅客機と戦闘機の区別さえつかぬままミサイルの発射ボタンを押すや戦争の犬ども

 

子供のころ客間を飾りし大雅鉄斎江漢いずこへ消えしや

 

知恵遅れ、自閉症発達障害、様々に言い換えられしが変らぬものは四十の息子

 

壇といふは小さくても深い蛸壺である古狸や女狐が棲息するところの

 

『藝術と実生活』を回周遅れで蒸し返す短歌蛸壺「虚構論争」

 

歌壇よりは花壇を私は取るだろう清く正しく美しいので

 

短歌とはなにをどう詠んでもいいんだ ああ胸がすく怪傑黒頭巾

 

好き好き好き嫌い嫌い嫌い好きか嫌いかで回る世の中

 

 

 

一身上の都合にて12月30日で退職すファミリーナ宮下の高橋さん 蝶人