蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

京に着ける午後~「これでも詩かよ」第118番

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ある晴れた日に 第277回

 

 

ライターの女性と私は、京都のあるお寺へ向かった。

 

取材は彼女にまかせて内部をぶらぶら歩いていると、広く薄暗く猛烈に暑い部屋のあちこちで男女が立ったまま抱擁して呆然としている。

 

私は一瞬歓喜仏ではないかと疑ったが、まぎれもなく生きた男と女のからみあいなのだ。

 

しかしよく見ると、男あるいは女が一人で棒立ちになってその姿かたちが熱で溶解している姿もあった。

 

いったいここはどういう部屋なのか。もしかすると彼らは即身成仏の途上にあるのかもしれない。

 

おそるおそる広間から後退した私は、ライターと合流して寺男の案内で別の小さな寺院に向かった。

 

ここは門が高いのでよじ登って入るしかない。寺には中年の艶めかしい女性とその娘がしゃがんで遊んでいる。

 

尿意に駆られたライターが慌てて便所を探したが、間に合わなかったとみえて少し離れたところでしゃがんで用を足すと、それが近くを流れている小川の流れに乗ってここまで流れてきた。

 

 軍隊が民衆を守るなんて冗談じゃない満洲沖縄みな裏切りやがった 蝶人