蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ベルトラン・タヴェルニエ監督の「ラウンド・ミッドナイト」をみて

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bowyow cine-archives vol.753

 

 

 伝説のアルト・サックス奏者と彼の熱烈なファンであるパリジヤンとの生涯にわたる友愛を描く映画です。

 

 まずデイル・ターナー役に扮したアルト・サックス奏者のデクスター・ゴードンの演奏と演技が素晴らしい。ジャズとアルコールしか目がないこの老人が「音楽以外すべてに疲れた」と呟きながら巴里の街角を彷徨する姿を見るとすぐにもくたばってしまうのではないか、と心配になりますが、ひとたびサックスを口にすると見事な演奏を繰り広げる。

 

 天才ミュジシャンの末路を案じた若きパリジャンは、そんな彼を自宅に迎え入れ、娘ともどもまるで実の家族のように暮らし始めます。彼らが関係者を集めて開いたホームパーティにおける演奏と団欒は絵に描いたように仕合わせな光景ですが、やがて老奏者は地元NYでカムッバックするのですが、そこは巴里のような居心地の良さはまるでなく、ああ無情、やがて悲しい最期を迎えることになるのでした。

 

 そんな無常感が全編を通じてひしひしと伝わってくる映画にも関わらず、彼の人となりを見、音楽に耳を傾けることの気持の良さというものが2時間にわたってゆるやかに持続するのは演出というよりもデクスター・ゴードンの持って生まれた魅力に依るのでしょう。

 

 ハービー・ハンコックをはじめ有名ミュジシャンがどっさり登場するオマケもあります。しかし巴里にはブルーノートなんてジャズクラブはなかったはずだけどなあ。

 

 

  サザンの歌はワアワアワアお前の頭はパアパアパア 蝶人