蝶人戯画録

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明治座で「春日局」をみて

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茫洋物見遊山記第167回 

 

 

 明治座の前を通ったことはありましたが、ここで芝居をみるのは恥ずかしながら生まれて初めて。橋田壽賀子の原作・脚本、石井ふく子の演出で「春日局」を見物しました。

 

 主人公のおふくを高島礼子お江与(江)を一路真輝、その他大空真弓沢田雅美京野ことみなどが出演しますが、滑舌を含めた総合的な演技力では徳川家康を演じた西郷輝彦に軍配が上がったのは私も意外でした。

 

 橋田選手の無用の長台詞をこの「星のフラメンコ」の歌手が音吐朗々と語り終えたのは見事。さすが元御三家だけのことはあります。

 

 されど元宝塚の一路真輝などは肝心の台詞が聞こえてこない。遊女役の京野ことみもいかにも演技が拙い。ヒロインの高島礼子にしたって、まあ学芸会に毛が生えたようなものでしょう。

 

 素人か素人同然の主役を輝かせるためにはよほど脇をしっかり固めなければいけないのに、それが出来ていない。

 

 演出はまるで3流のテレビドラマを見ているようで感傷的な音楽をやたら流して中高年の女性を泣かせようとするのですが、それが却って真の劇的効果を損なっていることをこのヴェテラン演出家は知らないようです。

 

 こういう大衆演劇をレベルアップさせるのは、小劇場の演劇や文楽や能や歌舞伎などをもういちど見直してみる必要がありそうです。

 

 なお本公演は23日まで人形町明治座で。すぐ隣に水天宮の仮宮が工事のために引越して鎮座しています。

 

 

    散華とは国が強いたる犬死にと思い知るこそ慰霊なりしを 蝶人