蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第19回

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西暦2015年睦月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.191

 

 

しかし少し考えてみると、この国にお目出度いことはあっても、目出度いことなど何ひとつないのだった。1/3

 

晦日から新年にかけて大切にしていた手袋や万歩計を失くす。失せ物占いでもしてもらおうかしら。1/5

 

モーツアルトはあんまり難しくもやさしくもない。中間のところで音楽を書く。しかしブリリアンスには欠けない。きいていてとても気持ちがいい。吉田秀和

 

そして音楽通がきくと「なるほどなあ」と思うところがどこかここかにある。しかしそれは露わになっているわけじゃなくて、素人がきいても「どうしてかはわからないけど、やっぱりいい曲だなあ」と思うようになっている。吉田秀和

 

k456のピアノ協奏曲、第2楽章のト短調の主題の後、ピアノの第1変奏の最初の音をきいただけで、「ああ、これはもう世界中のどんな作曲家でもなく、モーツアルトのものだなあ」ということがわかるような味わいがありますね。吉田秀和

 

ハイドンはレオポルド・モーツアルトに「私は正直な人間としてあなたに申し上げるけど、あなたの息子さんは、私が名前をきいたり、あるいは親しくお目にかかったなかで最大の作曲家です」と言った。これはかつて音楽家が同時代の音楽家について言った言葉として一番感動的な表現じゃないでしょうか。吉田秀和

 

モーツアルトは短調で書いてもその中に長調が混ざってくる。長調で書いても短調が混ざってくる。晴れたような曇ったような、曇ったような晴れた日本の4月の空を、桜の花の下から眺めたときのように。吉田秀和

 

明るい調和した優美な世界とデモーニッシュな悲劇的な世界と、どちらかが本当というのではなくて、その両方がモーツアルトの本質なのでしょうね。吉田秀和

 

フィガロの結婚」第2幕のフィナーレでは937小節の長さにわたって音楽が事件を運びながらどんどん流れてゆく。「よくもこんなに何でも音楽で書けたものだ」と思って感心しますねえ、僕は。吉田秀和

 

カールベームが死ぬ2、3か月前にゲッツ・フリードリッヒの演出で「フィガロ」を振ったとき、第3幕のフィナーレのファンダンゴで登場人物たちがみんな緩やかに踊って、まるで夢の中の風景みたいでした。これは僕、本当に忘れることができませんね。吉田秀和

 

いくら有名歌手がぐあんばってカヴァーしても結局原曲の歌い手に敵わないのはなぜだろう? おそらくオリジナルに似せようとしているからだ。

ボブ・ディランのThe First Noelを聴け。http://misterme.ro/category/video/Bob-Dylan-The-First-Noel-audio-2009/035961e58ed3acfe2ffb248a1c7d3d0f/162

 

カラヤンクライバーは良かったが、メストやバレンボイムマゼール、メータ、アーノンクールは良くない。小澤なんかは最悪だった。ウイーンフィルのニューイヤーコンサート。来年からは指揮者なしでやったほうがいい。1/6

 

昨年読んだ思想書で最も感銘を受けた1冊は、加藤典洋氏の「人類が永遠に続くのではないとしたら」です。40年以上前に国立国会図書館員だった彼と門君と3人で東京文化会館で聴いた若杉&都響ブラームス2番の名演を思い出しながら読んでいました。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1931728268&owner_id=55010941/7

 

安倍自民党のPRメディアと化したNHKでいちばん役立っているのは毎日夕方首都圏版で流しているオレオレ詐欺防止番組「私はだまされない」だろう。1/8

 

凶悪な台湾リスどもがコジュケイの親子を襲うのではないかと心配だが、多勢に無勢でどうしようもない。狸は昔から見かけるが、先日は50キロくらいの猪が出たそうな。冬の鎌倉の里山には食い物がないのだろうか。1/11

 

「マッサン」をみているとニッカ創業者の竹鶴より寿屋の鳥井信治郎の方が大物のように描かれているが、これはまったく事実と異なる。竹鶴は信治郎とは無関係に独立資金を得た。1/17

 

身近に迫るテロの脅威への反対、表現の自由の擁護と説かれればそうかと思うのだが、いまフランスで起こっている一大デモンストレーションの真因はどこにあるのかよく分らない。よく分からないときには、黙って人の言うことを聞いていればよいのだろう。1/17

 

イスラム原理主義者のテロルには、彼ら以外の誰もがこぞって反対するだろうが、そのテロルに対して、もっと巨大な組織されたテロルで対抗すれば、地上に平和が訪れるというのは、かつてかの阿呆莫迦ブッシュが夢見て大失敗した誇大妄想である。1/17

 

偏狭で狂信的な原理主義者のテロルには、私も反対する。しかしいくら言論が自由だと言うても、その直接の引き金になったフランスの新聞社のモハメット風刺自体はけっして褒められた代物ではない。ああいう下品で野卑で非常識な表現は自主規制しなければならない。1/20

 

イスラム危機打開のイニシアチブを取ることなぞ出来もしないのに功名心に駆られてノコノコ中東ツアーに出かけて国民の血税をばら撒き、テロリストの邦人殺戮の恫喝に遭うや人命第一と驚愕してトンボ帰る。長州の士なら「私を人質に取れ」とどうして言えないのか。1/21

 

この問題についてこの人物に聞けば多分こう言うだろう、と思って耳を傾けるとその通りを語っている。そういう事例が何度か続くと、私たちはだんだんその人物に興味を失ってゆくものだ。1/18

 

そのことをよく分かっていたので、吉本隆明は時々世間や自分の中の「常識」に逆らってあえて異論を打ち上げたのではなかろうか。その異端的な言動そのものが世の思想の多様な在り方に資するとひそかに考えながら。1/18

 

3番目の交響曲をナポレオンに捧げることは止めたけれど、ベートーヴェンにおける巨大なもの、権力へのあこがれは、ワーグナーほでではなくとも彼の音楽の底辺を流れていた。クナパーツブッシュ、クレンペラーフルトヴェングラーティーレマンの演奏はその流れを遡行し再現しようとするものだろう。1/18

 

自称「積極的平和主義者」が、長年にわたって培われてきた親アラブ友好政策をイスラエルへの急接近によって著しく毀損したことが、このたびのイスラム国の邦人人質事件につながったことは言うを待たない。1/25

 

聞こえたのは「人命第一」の掛け声だけ。現地で悪戦苦闘する若い副大臣にもっとも難しい外交交渉を丸投げして、事態をただ静観、追認するのみで「認知症対策」などにうつつを抜かしている。これでは戦後最悪最低の宰相と呼ばれても仕方がないだろう。1/27

 

安倍蚤糞が頼まれもしないのにイスラエルと中東へ行って、「イスラム国対策に2億ドル」などと見得を切らなければ、このような事態には陥らなかったと思うのだが、それについては全部棚上げとなり、いまや万事ヨルダン任せということか。1/28

 

死んであの世があるものか。死んで花見が咲くものか。それが問題じゃ。1/29

 

サッカーも負け、テニスも錦織が敗退したので楽しみは失せ、残ったのは胸が痛む人質問題だけ。1/29

 

 

 私の代わりにトイレに行ってくれる小便小僧どこかにいないか 蝶人