蝶人戯画録

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石井輝男監督の「網走番外地」をみて

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bowyow cine-archives vol.771

 

 

 およそ半世紀ぶりに再見した高倉健の網走刑務所脱獄物語なり。

 

 前半はいろいろな罪状で網走刑務所に収監された人々の囚人生活が描かれるが、なんといっても嵐寛寿郎の“八人殺しの鬼寅”が圧倒的な存在感を示す。

 

 後半は、安倍徹の悪だくみに巻き込まれた若いヤクザの健さんが、南原宏次と手錠で繋がれたまま恩人の丹波哲郎に追われて雪原を逃走する。

 

 スタンリー・クレーマーの「手錠のまゝの脱獄」が1958年、本作が1965年なので、おそらくあの有名なハリウッド映画をぱくったのだろう。

 

 高倉健石原裕次郎と同様、まったく演技が出来ないので、そのあるがままの姿で若き日の姿をスクリーン上に晒している。

 

 彼が歌う主題歌「網走番外地」の原曲は、作曲家橋本国彦に拠るもので、昔わたしがリーマン時代に広瀬さんから聞いたこの曲の歌詞は、夜が朝に白むまで延々と続いた。

 

 単純なメロディに乗せて果てしなく歌われるこの歌謡は、演歌というよりお経、お経というより古代の記紀歌謡の呪文の流れを汲むがゆえに、我々の琴線に黒々と訴えるのだろう。

 

 

    網走も京大阪も東京も日本もアジアの番外地なり 蝶人