蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ウディ・アレン監督の「人生万歳!」をみて

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bowyow cine-archives vol.778

 

 2009年に久しぶりにアメリカで製作されたニューヨークを舞台にした人世物語です。

 

 主役の初老の元物理学者役のラリー・デヴィッドが冒頭から物凄く長い台詞をらくらくと喋るので、もしかするとこいつはだいぶ肥ったがウディ・アレン本人ではなかろうかと思ったのだが、それはもはや耄碌しかかった当方の勘違いで、才気煥発の喜劇役者のラリー・デヴィッドなのでした。

 

 この映画の原題は「Whatever Works」なのだが、これを「なんでも良くなる法華の太鼓」あるいは「犬は吠えても地球は回る」と訳しても構わないでしょう。

 

 じじつこの映画では、棺桶に片足を突っ込んだ淋しい年寄りが、若く綺麗な姉ちゃんに惚れられたり、頑迷保守派のオッサン、オバハンが突如異性愛や芸術に開眼したり致しますが、

 

 酸いも甘いも噛み分けた不良哲学老人、ウディ・アレン翁は、世紀末の暗黒時代に生きる老若男女が、かというて徒に絶望や自棄自暴に陥ることなく、あくまでも明るく楽しく滅びてゆく秘訣を、この映画で伝授してくれているようです。

 

 

  ナイターの東京ドームを埋める人みんな一人で死んで行くのだ 蝶人