蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2015年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日にある晴れた日に第298回

 

 

ようやつと去んでくれけり如月尽

 

明治大正昭和平成人間皆迷羊

 

蛇長しされど我らが人世ほど長くはない

 

蛇長く長長き夜をひとりCOME ON寝む

 

冬去りて春来たりなば夏遠からじ

 

お玉が滅ぶか私が滅ぶかどちらが先に駈けつくか

 

けふもまたお父さん怒ったり注意したりしないでねという息子 

 

録画せしテレビの教養番組を倍速で見る私の晩年

 

耳を澄ましてごらん「無名にして共同なるもの」の唄が聞こえるでしょう?

 

アラ、ドロンかいな昔むかしヴィスコンティなんかに使ってもらっていた頃が一番輝いてたなあとは朧 

 

仕事よりは楽しみの日々のほうが楽しかろ古代ギリシアのその昔から

 

アカバへ!アカバへ!半月刀振りかざし熱砂を駈けしアラビアのロレンス 

 

「あれから4年」と言われなければ何ひとつ思い出さない豚児なわたし

 

物言えば唇寒き頃なれど云うだけのことは春風に云う

 

ぶうぶうとふいごを吹けばめらめらと古鎌倉の鉄燃え上がる

 

かぎりなく欲望を求めまた求め莞爾と死んでいく豚のように

 

この道はいつか来た道どですかでん君の祖父が逃げ帰った道

 

誰か何か言ってやって「私は何をどう頑張ればいいの」と訴えるパニック障害の人に

 

寒くなれば寒い暖かくなれば暖かい風が出るそんなエアコンと暮らしています

 

食べられる霞があれば送るべし売れぬ絵を描く私の息子に

 

真夜中に時々自分を暖めているひとりぼっちの我が家の風呂よ

 

やれ非常事態ほれ新事態ああせい法制と机上の空論馬鹿騒ぎ

 

ナイターの東京ドームを埋める人みんな一人で死んで行くのだ

 

由比ヶ浜の砂の下に昏々と眠り続ける若武者の歯よ

 

土手下に真昼の星は輝きぬ小さく青きいぬふぐり咲きたり

 

人の齢春夏秋冬空の雲過ぎにぞ過ぎてまた春となる

 

成駒屋アー!」「萬屋アー!」「三河屋アー!」と有頂天にラアラア騒ぐ大向こう

 

神様に愛されざれしかアマデウスせめてあと一年の命ありせば

 

 

  おそらくは千倉の青を描きつつ弥生の空に水丸逝けり 蝶人