蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

渋谷Hikarieで「I`m sorry,please talk more slowly」展をみて

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茫洋物見遊山記第175回

 

 ようやく春になって桜も満開になったというのに、昨夜から急に寒くなって関東平野では雪が降ったという寒い朝、私たち夫婦は変貌常ならぬ暗黒未来都市にやってきた。

 

 小山登美夫氏が監修するHikarie Contemporary Art Eyeの第1回目に7人の先鋭的なアーティストに混ざって愚息が作品を出展するというので遥々鎌倉からやってきたというわけだ。

 

 学生時代からなじみの深い渋谷の街だが、数年前から天と地を覆すような気狂いじみた大工事が始まり、二度出かけて、二度とも地下街で道に迷った私は、金輪際こんな暗黒部室満載の伏魔殿なんか行くまいと決心したのだが、息子の展覧会と会っては誓いも破らざるをえまい。

 

 ガラガラの会場の一番奥のコーナーに、彼の作品がポツン、ポツン、ポツンと3つ並んでいた。これは何だ、もしかして雑巾じゃないか、と思って近寄ってみると雑巾だった。いやあ東京のど真ん中で、雑巾の油絵を見せられるとは思わなかったなあ。

 

I`m sorry,please talk more slowly.

 

雑巾の霹靂に言葉を失った私らは、急に空腹を覚え、

近くの料理屋でうなぎのかば焼きを食べた。

久しぶりのかば焼きは美味かった。

 

 

 なお同展は来たる4月12日まで渋谷ヒカリエ8階アートスペースにて開催中。

 

 

       桜散る妻と撮り合う遺影哉 蝶人