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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

河野多恵子著「みいら採り猟奇譚」を読んで

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照る日曇る日第774回

 

 戦中の東京で生活する医師の家系の男女を主人公とする古典的な家庭小説であるが、その正統的な物語展開のど真ん中に、初めは処女のごとく忍び込む猟奇的な嗜虐と被虐体験が、2人の夫婦生活と小説世界の強烈なスパイスとなって、最後は炎のごとく燃え上がり、主人公と物語とわれわれを諸共に名状しがたいエクスタシーの宇宙に連れ込んでしまう。

 

 著者はいたぶる女といたぶられる男の嗜虐と被虐が相互を完全に補完し合い、霊肉一致の至上の愛の世界に昇華してゆくさまを描いている。

 

 のかしらん。

 

 それは知らんが、かの大文豪谷崎潤一郎に倣って著者が踏み入ったこの異常性愛の天国と地獄は、その後平成の羽田圭介の「トウキョーの調教」「メタモルフォシス」などによってよりリアルな形で精密に追求されている。

 

 ようであるわいなあ。

 

   にしてもさっぱり分からんてんで分からん男と女の玄妙なかんけい 蝶人