蝶人戯画録

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キリル・ペトレンコって誰だ?

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音楽千夜一夜第342 回バガテル-そんな私のここだけの話op.201

 

 

 ベルリン・フィルが3度目の正直でサイモン・ラトルの後任にキリル・ペトレンコを選んだというニュースには驚いた。

 

 ロシア・オムスクの出身で現在バイエルン州立(国立)劇場の音楽監督を務め、バイロイトで「指輪」の指揮をしているそうだが、日本に来たことはないし、CDだってろくに出ていないから文字通り寝耳に水だった。

 

 ロシア出身の優れた指揮者にはベテランのヴァレリー・ゲルギエフ、若手ではツガン・ソヒエフなどがいるが、この人はこれまでベルリン・フィルは3回しか振っていないという。

 

 それでも選ばれたのは、楽員の票が独出身本命ティーレマンベネズエラの異端ブタブタドダメルとに真っ二つに割れ、急遽ダークホースとしてどこからともなく現われたロシアの鳶が油揚げをかっさらったのではないだろうか。

 

 ベルリンフィルで振ったスクリャービンの「法悦の詩」などを視聴してみるとなかなか根性のある音楽をやっていて、ちょっと私の大好きな広上淳一を思わせるところがあるが、「第2のクライバー」という噂もある天才肌指揮者らしいので、いやがうえにも期待が高まる。

 

 しかしベルリン・フィルアバドやラトルをシェフに選んだときにも驚いたが、じつに大胆な選択をするものだ。過去の伝統にあぐらをかかず、絶えず音楽の最先端へと飛躍を続けるこの戦闘的な姿勢を、自民党と同様の保守反動の高みであぐらをかいている「天下のN響」も少しは見習ってほしいものである。

 

 

キリル・ペトレンコの演奏→ http://tower.jp/article/feature_item/2015/06/22/1102

 

 

  あまりにも早く茶色い染みがつきだした命短し乙女椿 蝶人