蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ちょいと前の日本映画ずら

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.867、868、869

 

 

原田眞人監督の「クライマーズ・ハイ」をみて

 

 はじめは処女の如く終りは脱兎のごとし。主人公の高嶋や小澤との登山と航空機の遭難事故とが有機的に接合されているとは思えない。

 

 むしろ遭難現場にスーツ姿で登攀してしまう堺雅人の行為のほうが題名の精神に近い。

 

 堤真一はあまり好きな顔ではないが、本作では社長役の山崎努、販売局長役の皆川猿時ともども好演ずら。

 

 

北野武監督の「HANA-BI」をみて

 

 画面を暗くしてなんとなく不穏な空気を醸しだし、まるでおしのように言葉を口にせず、そのくせ怒るといきなり他人を殴ったり、酷い時には拳銃で撃ち殺したりする、そういう不可解で不条理な映画なり。

 

 主人公は元刑事で、退職してから銀行強盗をやったり、末期ガンでもうすぐ死んでしまう愛妻のために各地を旅していた訳だが、その道中でヤクザを皆殺ししたりして、元の部下から追われるのだが、最後は拳銃で妻を殺して自殺してしまう。

 

 こういう映画の筋としても、人間の生き方としても腑におちない映画を、どうしてカンヌはほめそやしたりするのだろう。

 

 

○瀧本智光監督の「犯人に告ぐ」をみて

 

 豊川悦司が主人公の刑事になって少年連続殺人事件の悪辣非道な犯人「バッドマン」と対決する波乱万丈のサスペンスドラマなり。

 

 面白いのは刑事がテレビの報道番組に出演して、犯人を挑発しながら犯罪事件の劇場化を図ること。これは映画だからいちおうの成功を収めるのだが、実際にこのようなやり方を警察が採用したらどのような作用と反作用がもたらされるだろうか。

 

 確かに捜査への社会的関心が高まって犯人の検挙率が向上するかもしれないが、捜査員のヒロイズムや犯人の逆上などの副産物によって捜査が混乱、複雑化してさらなる犠牲者を誘発する危険もあるのではないだろうか。

 

 これは単なる映画だから、手に汗握って見物していればいいだけの話だが。トヨエツよりも上司役の石橋凌、妻役の松田美由紀のほうが存在感がある。

 

 

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