蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2本の時代劇ずら

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.882,883

 

 

滝田洋二郎監督の「壬生義士伝」をみて

 

官軍が火砲を乱発している最前線に抜刀した主人公が突撃していけば即死するに違いないのに、それが生き延びて親友が留守居役を務めている南部藩邸に逃げ込んだら腹を切れと言われたので切腹して果てた。

 

という子母澤寛経由浅田次郎の原作にリアリテイがないので大いに興を殺がれるが、貧しい妻子を養うために脱藩して新撰組に入り、どんどん人を斬る「優しい東北人武士」吉村貫一郎役を中井貴一が好演している。

 

代役の滝田も敢闘しているが、できることなら相米慎二のメガフォンで見たかったずら。

 

 

内田吐夢監督の「浪花の恋の物語」をみて

 

近松門左衛門の「冥途の飛脚」を原作に、忠兵衛を私の嫌いな錦之助が演じるが、これは監督が厳しくコントロールをしているので珍しく殊勝な味わいを出しているし、相方の有馬稲子も同様。

 

ほおっておけば放恣に流れかねない悲恋物をきっちりと古典の規範に収めたのはやはり監督の力量といえそうだが、あの大きな顔で長谷川一夫近松を演じるのは勘弁してもらいたいずら。

 

 

  蝶よりも蛾を低く見るそのこころ人種差別のはじまりなるか 蝶人