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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

岡本喜八監督の「日本でいちばん長い日」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.888

 

 

 8月15日の天皇詔勅が出される前後の政治的混乱、というより陸軍若手強硬派によるクーデター未遂事件を扱っている。

 

 帝国陸海軍が国家を聾断し、血迷って開始した“大東亜戦争”であったが、結局天皇の「聖断」によってしか無謀な国土決戦を止められなかった恐るべき無責任体制をこの映画は暴露している。

 

 開戦も「終戦」もその「聖断」を下した人物が戦勝国によっても敗戦の当事者によっても裁かれることがなかったのだから、世にも不思議な物語というほかはないだろう。

 

 こういう集団無責任体制は、我が国の専売特許として戦前、戦中、戦後70年に至るも連綿として継続されていることは、つい最近の東京五輪を巡るおまんた音頭騒動のてんやわんやを見ても一目瞭然であろう。

 

 我が国は光輝あるこの「そして誰もやっていない体制」を、(憲法第9条は廃棄処分したとしても)堅持しつつ、これからもシコシコやり続ける素敵に忍耐強い国なのでR。

 

 で、肝心の映画の方だが、珍しいことにどの出演者も役柄にぴたりと嵌っており、当時の製作者と三船敏郎などの出演者のレベルが現在と違って相当高かったことを物語っている。岡本喜八の演出も気合いが入っている。

 

それにしてもクーデターの張本人役を演じた佐藤充と横浜警備隊長役の天本英世の狂気に満ち満ちた表情は、げんざい憲法破壊のクーデターを敢行中の悪辣非道な猪八戒の醜悪な顔と完全に二重写しとなっているようだ。

 

 

  さんざめく五輪ドームを埋めし人みんな一人で死んで行くのだ 蝶人