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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

鈴木志郎康著「どんどん詩を書いちゃえで詩を書いた」を読んで

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照る日曇る日第809回 

 

 

敬愛する詩人の最新版を拝読いたしました。

 

鈴木さんの詩はとっつきやすく、すらすらどんどん読めて、なおかつ意味内容が胸にまっすぐ飛んでくるのがなによりうれしい。

 

とかく現代詩というと最初の行からして格調が高く、しかし何回読んでも難解でなにを云いたいのかさっぱり分からないというタイプが多いのです。私はだからといって、そういう詩が駄目だと云っている訳ではないのですが、なんだか苦手なんです。

 

私のような詩の初心者である読者がついてきやすいように、鈴木さんはさまざまな創意と工夫をされています。たとえば話し言葉、それも非常にざっかけない口調を多用し、自分が書き続けるためにも、また読者が読むためにも勢いがつくようにオノマトペを多用し、フレーズとフレーズの間に、「ってやんでぃ!」「あっ、はあー」「困っちゃうね」「変わっちまった」「ひょいひょいひょい」「うんっぐっく」「アッジャー」「ケッ」「ササッサー」といた独特の「合いの手」を入れて軽やかにやか、また愉しげに、我らを前へ前へとヒッパって行きます。

 

ちょっと自分を韜晦する戯作者の風体を装いながら、しかし連れられてゆく先は、天国でもあるし、地獄でもあるような、今まさに私たちが生きているこの世の中のいたるところ。

 

都内の花見ドライブもあれば、「丸山豊記念現代詩賞」の授賞式、衆議院議員選挙の投票所、詩人の9歳の記憶を探す旅もあれば、難病と闘う最愛の奥様への賛歌もある。読みはじめたら最後まで読み続けずにはいられない花も実もある詩集です。

 

自由奔放、融通無碍、なんとなくノンシャランに書いていると見せかけて、海千山千のこの老獪な詩人は、ちょっとした離れ業も見せている。

 

「七十九歳の誕生日って、ちょっと困っちゃうね」という長い長い詩なんかは、全23連をそれぞれ8行で書くと見せかけて、第19連だけは8行+8行=16行のダブルにしてあったりするのです。

 

アッジャー!

ったく、ひょいひょいひょい、うんっぐっく、うんっぐっく、ですよ。

 

 

「あっ、はあー」「変わっちまった」「ってやんでぃ!」「困っちゃうね」「うんっぐっく」 蝶人