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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

古川映子(玉萌)句集「萌Ⅱ」を読んで

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照る日曇る日第813回

 

 

 小生のミク友である「アート」様より頂戴した句集「萌Ⅱ」を、謹んで拝読いたしました。

 

年の夜の湯浴みのわが身いとおしむ

ふと気づく光は春を含みけり

天の青満開の花待ちており

 

 70代の記念に御作りになった102ページの書物には「アート」のハンドルネームにふさわしくご自身の素晴らしい水墨画の挿絵もいくつか添えられて、俳句と日本画をふたつながらに鑑賞できる楽しい読みものでした。

 

桃熟すひそかな疵をかくし持ち

満足の傾き得たり夏帽子

炎天や今まぎれなく世にありて

 

 春夏秋冬、そして春が巡ってくるまでの四季折々の暮らしと様々な感慨を十七語で言い尽くす手腕は確かなもので、さすがに中村汀叙女、伊藤淳子両氏に師事されただけのことはあるなあ、といつまでたっても俳句の詠めない老生はあっさり脱帽でした。

 

向日葵の貌つよきまま枯れにけり

向日葵の枯れつつもなお咲きつげり

草むらへ放つ蟷螂振り向かず

 

 作品はいずれも秀歌揃いですが、いかにも作者らしいなと思ったのは、次のような句でした。

 

木の芽吹くように生きたし束の間も

雪うさぎ一気に描いて筆洗ふ

青嵐女死ぬまで女なり

惜しまれて死にたきものよいなびかり

 

 そして全体を通じて強く心に残ったのは、ひとすじの道を共に歩んでこられたご主人への深い愛と信頼であったことはいうまでもありません。

 

一皿の生牡蠣頒かつふたりかな

ゆっくりと残る桜をみるふたり

冬ぬくし古家整えふたり住む

春光や世の片隅に混じりおり

 

 おふたりのご健勝とさらなるご活躍を祈ってやみません。

 

 

追伸 「25周年記念むさしの水彩画会展」に作者の作品が展示されます。

2015年9月27日~10月1日 ゆめりあギャラリー7F 03-5947-2351

 

 

   大君の仰せのままに防人はホルムズ海峡の機雷獲るらし 蝶人