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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

池澤夏樹編「河出版日本文学全集08」を読んで

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照る日曇る日第824回

 

 

日本霊異記」と「発心記」を伊藤比呂美、「今昔物語」を福永武彦、「宇治拾遺物語」を町田康が現代日本語にしているが、伊藤と町田のが断然面白い。

 

 なるほど古典の翻訳は10年ごとにやり直せと言われるだけのことはあるなあ。

 

 町田のは彼のこれまでの小説以上の出来栄えで、もはや原作のていを留めないほどにポップでパンクで自由奔放に暴れまくった平成版「宇治拾遺物語」に大変身しているが、かといってオリジナルからかけ離れたものではないのは、そもそもこの作品がそういう桁違いのお噺がてんこ盛りになっているからだろう。

 

 滝口道則が妖術で陰茎を取られてしまう噺、博打の子が財産家の婿になった噺、伴大納言が応天門を燃やした噺、猿沢の池の龍が昇天する噺、清少納言の父、清原元輔が落馬するは噺、ナマズが父親と知りながら喰った息子の噺、孔子が嘲弄される噺などなど、どれをとっても千夜一夜物語のように面白く、クイクイと読ませてくれます。

 

 ところで「発心記」は鴨長明の作とされているようだが、どうも違うような気がする。あんな道学者風の阿弥陀への帰依を「方丈記」の作者が衷心から行っていたとは軽々に信じられないのである。

 

 

  外出の時は新しい肌着を身につけるいつどこで何があるか分からないので 蝶人