蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

家族の肖像 その7~「これでも詩かよ」第160番

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ある晴れた日に 第337回

 

「お父さん、虫歯の英語ってなあに?

「虫歯、虫歯の英語かあ、バッド・トゥースかな」

「バッドトース」

「そうじゃないよ。バッド・トゥース」

「バッド・トース」

 

「お母さん、よろしくお伝えください、ってなに?」

「ごきげんよう、のことよ」

「よろしく、よろしく、よろしく」

 

「ぼく、佐々木蔵之助ですお」

「佐々木耕君じゃないの?」

「違いますお、佐々木蔵之助です」

「佐々木蔵之助さん、こんにちは」

「こんにちは」

 

「ぼく、タカハシさんに『手とまってる』『やり直し』っていわれちゃったよ」

「そんなやつ、お父さんがやっつけてやる」

 

「お父さん、さらにってなに?」

「それに加えて、っていうことだよ」

「さらに、さらに」

 

「お母さん、けっきょくってなに?」

「ほんとうのところ、ってことよ」

「けっきょく、けっきょく、けっきょく」

 

「お母さん、フツウってなに?」

「フツウねえ。フツウ、フツウ、フツウは普通ってことよ。耕君、普通に戻ってみる?」

「ぼく、フツウに戻りますお」

「そうか。よし普通に戻るぞお、いち、にの、さん!」

 

「お母さん、宝物ってなあに?」

「一番大切なものだよ。耕君、お母さんの宝物って何だか分かる?」

「…………耕君だお」

「あったりい! それじゃあ耕君の宝物はなあに?」

「お母さんだお」

 

 

 ハロウィンなるかぼちゃ祭りを持て囃す軽佻浮薄な日本人かな 蝶人