蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2015年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧在庫処分編その7

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ある晴れた日に 第349回

 

 

わが街の花は竜胆だというけれど市内のどこでも見たことがない

 

広辞苑は第4版があれば十分よと笑っておりし歌人ありきつつがなきや

 

一枚のポロシャツだけで人変わるたかがファッションされどファッション

 

家毎に三つの憂い窓閉ざす

 

冥界より聴こえる音や霜月尽

 

世界中がアマゾンの本をポチるので火星社書店は潰れてしまった

 

8.6 8.8に8.15 すべてが単なる記号となるのか

 

真夜中にミンミン鳴くのはやめてくれ明日は朝が早いんだ

 

この辺は三軒に一軒が空家ですこの国には家も土地も要りません

 

脳内にショスタコーヴィチの「ワルツ第2番」鳴り響き五七五なぞ歌えやしない

 

芸大の庭で拾いし一粒のムクロジの実が大樹となりたり

 

のっとおんりーばっとオールソオしかわからんかった何十年も英語を勉強したけど

 

スコーカー激しくびりつく真夜中のグレングールド

 

適当に「いいね」を押せばそれでいいのにああだこうだとからんでくるやつ

 

君も僕も最後の最後までつまびらかにしない人世でいちばん大切なこと

 

となりの家の子が声を限りにラアラアと意味無き意味を叫んでいる

 

みずからの存立自体を危うくする存立事態を存立させるな

 

毎日が日曜のわたくしなれどなぜだか日曜日はどこか違う

 

一頭の蝶なら渡れる韃靼海峡

 

クワガタは子には宝農夫には栗を根絶やしにする恐るべき毒虫

 

 

「通帳に2億円の預金がある」と嘯く商人の隣で冷やし中華を食したり 蝶人