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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

鎌倉文学館にて「鎌倉文士・前夜とその時代」展をみて

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茫洋物見遊山記第194回&鎌倉ちょっと不思議な物語第362回

 

 同館が主宰する文学散歩に参加していながら、肝心の展覧会がまだだったので、快晴の午前にひとわたり見物してきました。

 例によって川端康成とか久米正雄とか、里見弴とか高見順とか小林秀雄とか芥川龍之介なんかの実筆がずらずら並んでいましたが、中村光夫選手なんかの字は細かいですね。
 字が細かい人はやはり繊細で神経質なのかなあと思いながら、ガラスケースの内外を眺めていたら、超細かくて虫めがねでもなければてんで読めない文章がありました。

 それは驚いたことに築地警察署から小林多喜二が確か中野重治の娘さんに宛てた手紙で、内容は特にどうということはないが、そのすぐ後に虐殺されるとはこれっぽちも思えないほど晴朗なトーンで延々と書かれ、なにせ警察からの手紙ゆえ定められた極小スペースに牛ぎゅう詰めの超細字で面々と綴られているのでした。

 しかし鎌倉文士でもないのに、どうして小林多喜二の手紙が展示されていたんだろう?
 多喜二と彼女はどういう関係だったんだろう?

 あとは妻に宛てた芥川の、神経症的で、律儀で、異様な遺書がいま読んでも不吉なオーラを放っていたなあ。芥川とか太宰とかは作品だけで遠くから付き合ってればいいけれど、実際に交渉するとなると大層気骨が折れる厄介な人物だったんだろうなあ。

 なお同展は来る12月13日まで同館にて寂しく開催ちう。

 

    東の空より谷戸に光差し竜胆の花いま開かんとす 蝶人