蝶人戯画録

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ソニー盤「ブーレーズ指揮シェーンベルク作品集」全11枚組CDを聴いて

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音楽千夜一夜第353回 

 

 このピエール・ブーレーズアーノンクールが引退してクラシックの指揮界もついに神々の黄昏の時代に突入した感が深い。

 

 あとは小賢しい商魂小僧どもが重箱の隅をつつき捲くるような新奇で珍奇な解釈と演奏を繰り広げて疲弊しきった市場をさらに混濁させてゆくんだろうが、おらっちには何の興味もない。

 

 ところでこうやって古の現代音楽の旗手の代表作をやはり古の現代音楽指揮の第一人者の演奏で初冬の夕べに低く鳴らしていると、なんだかこれが現代音楽ではなく繊細なバロック音楽のように遠く懐かしい響きでわが老残の耳に届いてくるから不思議である。

 

 そこでは「淨夜」も「室内交響曲」も「グレの歌」も「モーゼとアロン」も同じ単調なメロディで古代人の浪漫を歌っている。

 

 

   蟷螂の腹より出でし発条にデザインされた舗道を歩む 蝶人