蝶人戯画録

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河出版「日本文学全集第11巻」を読んで

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照る日曇る日第832回 

 

 

 井原西鶴の「好色一代男」を島田雅彦上田秋成の「雨月物語」を円城塔山東京伝の「通言総籬」をいとうせいこう為永春水の「春色梅児誉美」を島本理生がそれぞれ現代語に翻訳しているが、いずれも甲乙つけがたい名作の名翻訳である。

 

 私はこれらの作品をかつて原文で読もうとして挫折した日本語の劣等生なので、若い現代作家がよくもあの難解なテキストにくらいつき、かくも精緻にして大胆、新鮮な日本語にリメークしたものよ、と感嘆のほかはない。

 

 それにしても江戸時代の文学の水準の高さよ! これらの「浮世草子」、「読本」「洒落本」「人情本」が描き出す人間ドラマの面白さと深さは現代の小説のそれと比べてもいささかの遜色がないどころか、もっともっと高度なレベルでそれに先行し、それを先取りしていたのである!

 

 

  書を捨てて街へ出よと妻は説く寺山修司を知ってか知らずか 蝶人