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蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

オフィーリア~これでも詩かよ第169番

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 ある晴れた日に 第364回

 

今朝、死体を見た。

滑川の橋の下の魚たちが大好きな窪みの上で

それは、冷たい水に浸かっていた。

 

昨日白鷺の夫婦が、長い首をつんつん動かしながら

ぎくしゃく歩いていた小さな川に

蒼ざめたマネキンのように、ぽっかり浮かんでいた。

 

かろうじて水面からのぞかせた顔は、蝋のように白く

半ば閉じられた両の眼は

昇り始めた朝日をじっと見つめている。

 

祈ろうとして胸を目指していた両の手は、

その願いを果たせなかったらしく

水面に掲げられて行き場を失っている。

 

それは英国の画家ミレイが描いた

水藻の間を流れゆくオフィーリアに似ている。

叶わぬ恋に身を投げた高貴な少女の最期の姿に。

 

あくまでも恋人の抱擁を求めようとして、微かに開いた口からは

いつかどこかで聴いた尼寺の歌が聞こえてくるようだ。

寿限無寿限無海砂利水魚と泡立つ音に合わせて。

 

しっ、静かに!

水底で黙って耳を傾けているのは、

午後の太陽をじっと待っているハヤの七人家族。

 

せっかちな翡翠は、青の残像を残して慌ただしく飛び去り

白鷺の夫婦は、小魚探しに余念なく

寝坊助の亀次郎は、長い冬眠からまだ醒めない。

 

 

 こんな児は世間じゃ誰も可愛がらない妻と二人で可愛がってやる 蝶人