蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

今井正監督の「にごりえ」を見て

 

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.515

 

 

いずれも樋口一葉3本の原作を久保田万次郎の監修の脚色で今井正が演出しているが、モノクロームの端正な色彩が美しい。

 

「十三夜」では嫁ぎ先の夫から虐待され子を捨て実家に戻る決意を固めて父母を訪ねた若妻が因果を含められて泣く泣く大家に戻る途次で車引きの幼馴染芥川比呂志と邂逅する。

 

「おおつごもり」は、女中の司葉子が叔父叔母が必要とする金子を吝嗇な商家の妻から盗み出したが、奇跡的に罪に問われずに済むようになる話。

 

 「にごりえ」は、美貌の売れっこ芸者が宮口精二との腐れ縁を切って金持ちの役人の元に走ろうと夢見ながら、すべてに絶望して行きずりの男と心中して果てる哀れな情話であるが、全体に投げやりでアナーキーな心情が流露していて哀切。ここに日本あり。

 

糞袋Aと糞袋Bがお互いに臭臭申すクソクソクソ 蝶人