蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

オルセー美術館展2010「ポスト印象派」を見る

茫洋物見遊山記第28回月曜日の午後、オルセー美術館展2010「ポスト印象派」を見物してきました。あらゆる方向からやってくる光線を描こうとしたモネ、森羅万象をキャンバスの上で解体し再構築しようと試みたセザンヌ、未開の国の風光に新芸術の根を下ろそ…

西暦2010年皐月茫洋花鳥風月人情紙風船

♪ある晴れた日に第76回 ホー、ホー、ホー、ホー ホー、ホケキョ ショパン哉長島一茂がギリシアの暴動について語っている五月の朝よ飛んでいる蝶の名前を言えることほぼゆいいつの長所ですかね年年に知らぬこと多く現れ出でてよくも考えずみなほうりなげる…

蒲原有明・川端康成旧居跡を訪ねて

茫洋物見遊山記第27回&鎌倉ちょっと不思議な物語第219回鎌倉文学館の「文学散歩」に参加して、明治時代の詩人蒲原有明と昭和の文学者川端康成の旧居を見物しました。大塔宮からほど近くにあるこの旧居跡には現在も蒲原有明の遺族の方が住んでおられる…

佐藤賢一著「王の逃亡」を読んで

照る日曇る日第346回血わき肉躍る「小説フランス革命」も、いつのまにやら第5巻となりました。 ヴェルサイユからあほ馬鹿おばさん連中によってパリのチュイルリー宮に拉致されていたルイ16世は、なにをとち狂ったのかマリー・アントワネットの情人と噂…

「鎌倉宮」を拝しながら

茫洋物見遊山記第26回&鎌倉ちょっと不思議な物語第218回 「鎌倉宮」は、承久3年1209年に建立されたいまはなき東光寺の跡に明治2年に建立された新造の神社ですが、これも廃仏毀釈の変種かもしれませんね。この神社にはどういう因縁だか毎年新年に…

古井由吉著「やすらい花」を読んで

照る日曇る日第345回 一羽の胡蝶によって夢見られた酔生夢死の奇譚が、耳を傾ける人とてなく、とつとつ語り継がれております。そのさま在原業平のしどけなき恋物語を、あるときは漂泊の詩人西行法師の高雅な法話を、またあるときは耳無芳一の流麗な琵琶さ…

ポール・トルトリエの「EMI録音集」を聴いて

♪音楽千夜一夜第133回1枚200円というスーパー・バジェット価格につられて買ってしまった20枚組のCDですが、なんという音楽のたのしみをプレゼントしてくれたことでしょう。窓際の梅から桜、桜から躑躅へと季節が過ぎるのも忘れて、書斎の英国製ハ…

バーンスタイン指揮ウイーンフィルで「マーラーイ短調交響曲」を視聴

♪音楽千夜一夜第132回今年はショパンとシューマンの記念の年であることは知っていましたが、マーラーの生誕150周年でもあるということを、私は最近レコード会社から続々発売されるマーラー全集の販促宣伝キャンペーンで知らされました。誰かの記念年だ…

鎌倉文学館で「高浜虚子 俳句の日々」展を見る

茫洋物見遊山記第25回&鎌倉ちょっと不思議な物語第217回 百千の薔薇薫る鎌倉文学館で、俳人高浜虚子の特別展を眺めてきました。(7月4日まで開催)虚子と言えば、ただちに流れ行く大根の葉の早さかな遠山に日の当たりたる枯野かななどの秀句を思い浮…

黒井千次著「高く手を振る日」を読んで

照る日曇る日第344回こういう作家がいるとは知っていましたが、その作品を読むのはおそらくこれがはじめて。タイトルが抒情的で、なんだか涙腺を刺激するので、ついつい読む気になったのですが、ラストではその通りになりましたから、まずは想定内の首尾…

桐野夏生著「ナニカアル」を読んで

照る日曇る日第343回「ナニカアル」という奇妙奇天烈な題名は、この小説の主人公林芙美子の詩から採られています。林芙美子って「放浪記」の作者であるだけでなく、詩人でもあったのですね。(前略)刈草の黄なるまた 紅の畠野の花々 疲労と成熟と なにか…

林望訳「謹訳源氏物語一」を読んで

照る日曇る日第342回りんぼう博士による源氏物語の現代語訳の刊行がはじまりました。第一巻では桐壺から若紫までを取り扱っていますが、橋本治による前代未聞の自由奔放訳をのぞけば、これまでに発表されたどの翻訳よりもフレキシブルな現代日本語を軽快…

クリント・イーストウッド監督・主演映画「トゥルークライム」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.29 1999年にクリント・イーストウッドが監督・主演した映画「トゥルークライム」を見ました。アンドリュー・クラヴァン原作のサスペンス小説「True Crime」を20世紀フォックスの大プロデューサー、ダリル・ザナ…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第7回

bowyow megalomania theater vol.1ああら、坊や初めてなのね。おやおや、もうこんなにおおきくしちゃって。ねえ、どんな気分? いい? いいんでしょ? 分かってるんだから。隠さなくたって、分かってるんだから。ほら、ここんところ、君のちっちゃなオッパイ…

村上春樹著「1Q84BOOK3」を読んで

照る日曇る日第341回 はじめに言葉がありました。そして言葉を信じる者は言霊を信じ、言霊の幸ふ精神の王国を言葉の力によって創造することを夢見るのです。著者はこのようにして1984年に住んでいた青豆と天吾を拉致して「1Q84年」に連れ去り、本…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第6回

bowyow megalomania theater vol.110月25日発作が起きました。でも、そのことは後で分かったのです。お母さんが真っ青な顔をして僕の目をみつめていることに気づきました。突然の発作だったらしいのです。でも僕はなにも覚えていません。 いや、なにか奇…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第5回

bowyow megalomania theater vol.1 10月22日昨日お父さんが話してくれた話です。なんでも遠い遠い遥かな海の彼方にフウイヌムという国があって、フウイヌム族という馬たちが住んでいるそうです。フウイヌム国では馬たちが主人で、人間はヤフーと呼ばれる…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第4回

bowyow megalomania theater vol.110月21日 晴れたり曇ったりきのう吉本公平君が、塩川洋子を好きだ、塩川洋子を抱きたい、と絶叫した話はすぐに星の子学園のみんなに伝わりました。みんなもうすぐ高校生なんだ。男の子は女の子が、女の子は男の子が、欲…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第3回

bowyow megalomania theater vol.1 僕はその時、どうした拍子だか思わずムラムラっとなりました。僕は普段からほとんど性の欲望がない人なのですが(S先生がそうおっしゃいました)、みんなはどうしていますか?三平君はオナニーというのをするんだそうです…

神奈川県立近代美術館鎌倉で「日本近代洋画の名品選」を見る

茫洋物見遊山記第24回&鎌倉ちょっと不思議な物語第216回連休の最後の日、八幡様の斃れた大銀杏あちこちから緑の新芽が元気よく伸び始めているさまを見物してから、お馴染みの美術館にやって来ました。1951年に坂倉準三設計の建築で日本に初めてで…

渡辺京二著「黒船前夜」を読んで

照る日曇る日第340回ペルリ率いる黒船が襲来するしばらく前の時代のロシア、アイヌ、日本の交渉を描くこの本は、1)アイヌの人々の類まれな人間性と高貴なまでの文化的生活、2)強権南下侵略国家という通説を打ち砕くほとんど牧歌的なロシアの蝦夷地への…

今日は一日ショパンの日

♪音楽千夜一夜第131回というのが5月3日のNHKハイビジョンとFM放送局のキャッチフレーズでした。んで映像を見たり、ラジオをつけたりしながら終日ショパン三昧を楽しませていただいたのですが、仲道郁代さんがみずから「いま三」と卑下した一気呵成…

鎌倉国宝館で「鎌倉の至宝展」を見る

茫洋物見遊山記第23回&鎌倉ちょっと不思議な物語第215回連休の晴天の日にこのコレクションを駆け足で見物しました。例によって国宝、重要文化財がさりげなくどっさり展示してあるのが魅力です。今回の目玉はご近所の浄妙寺の仏殿本尊である「釈迦如来…

バレンボイム指揮ベルリンフィルの「オックスフォード・ライブ」を視

♪音楽千夜一夜第130回1日のNHKのハイビジョンテレビ放送で、今年のベルリンフィルのヨーロピアンツアーを放送していました。英国のオックスフォード大学からの生中継です。指揮はダニエル・バレンボイム、コンマスは現在仮免許運転中の樫本大進、曲目…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第2回

bowyow megalomania theater vol.110月20日 雨食っちゃ寝、食っちゃ寝、して、なにが悪い。豚みたいに生きて、なにが悪いんじゃ!と、軽度の脳性麻痺の公平君が車椅子をけっとばして叫びました。オレは18歳じゃ、オレは男じゃ。オレはヨーコを抱きたい…

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第1回

bowyow megalomania theater vol.1 10月19日 曇季節外れの台風が一晩中あれくるったために、僕はいっすいもできませんでした。星の子学園へ行っても頭はガンガンするし、身体はフラフラするし、中田先生や高木先生がなにかおっしゃってもぜんぜん耳に入…