2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧
ある晴れた日に第230回 なにゆえに今年の春はまだ来ない我が家の桜がまだ咲かぬから なにゆえに右の毛だけが禿げたのか耕君がそこを激しく叩くから なにゆえに急に耕君はドモルようになったのか悪いやつらが圧迫したから なにゆえに阪神は万年駄目トラな…
ある晴れた日に第229回 渋谷には、行ってはならない。 とりわけ渋谷の地下に降りてはならない。 行ってはならぬといいながら、私は渋谷に近づいてゆく。 どんどんじゃんじゃん近づいていく。 JRのすぐ傍にかつて東横線があり、東横線の下には東急のれん…
bowyow cine-archives vol.638 先進国の都会のショーウインドウを華麗にきらめいているダイアモンドは、じつはアフリカの貧困国の貧しい労働者を血祭りにあげ、徹底的に搾取するグローバルな経済構造の中から誕生していることをあばく社会派ドラマである。…
照る日曇る日第670回&671回 著者が、生涯の最後に遺した大長編小説である。 小さな藩の平侍として生を享けた主人公三浦主水正が、さまざまな艱難辛苦に耐えながら、みずからの望みではなかったが、ついに城代家老の要職に就くまでの、ある意味で立身出世の…
西暦2013年霜月蝶人酔生夢死幾百夜 久しぶりに音響の不気味なサントリーホールへ行ったら、背中どころかケツ丸出しの超妖艶女流ピアニスト、カティア・ブニアティシヴィリ嬢が髪振り乱して演奏していたので、超興奮した私が舞台に上がってバックからクイ…
ある晴れた日に第228回 天ざかる鄙の里にて侘びし人 八十路を過ぎてひとり逝きたり 日曜は聖なる神をほめ誉えん 母は高音我等は低音 教会の日曜の朝の奏楽の 前奏無みして歌い給えり 陽炎のひかりあまねき洗面台 声を殺さず泣かれし朝あり 千両万両億両す…
ある晴れた日に第228回 昨日は私の母愛子の命日でしたので、その冥福を祈るために生涯アマチュアの歌詠みであった彼女の全歌集をここに採録しておきたいと存じます。母の霊よ安かれ! つたなくて うたにならねば みそひともじ ただつづるのみ おもいのま…
ある晴れた日に第216回 檸檬檸檬、檸檬は苦いか酸っぱいか 京都三条麩屋町、丸善書店の本の上に置かれた檸檬爆弾 10月8日、快晴の羽田で配られた黄色い檸檬 ゼームス坂の高村邸、智恵子さんがむしゃむしゃ食べてしまった檸檬 昨日、我が家の奥さんが潰…
照る日曇る日第669回 こういうすんごい短編だったとは知らなんだ。まるでドストエフスキーの大審問官の巻のような強い衝撃を感じた。 素材としてはキリストとか宗教問答とかを取り扱っているのだけれど、それは表面だけのこと。 兄のズーイが落ち込んだ妹…
ダミアーノ・ダミアーニ監督の「群盗荒野を裂く」をみて bowyow cine-archives vol.637 大きな状況としてはメキシコの貧農と大ブルジョワの階級闘争があり、権力者に歯向かう主人公たちの政治的立場が暗示されているが、小さな状況としては、金欲や性欲や…
照る日曇る日第669回 いまは平成の御代であって平安時代ではないのに、引っ越しの前夜に引っ越し先とは方角が異なる場所で夜を明かす「方違え」、頭のうちそとで幻の寺の梵鐘が微かに鳴り響く表題作も面白かったが、本書に収められた最上の短編は疑いもな…
照る日曇る日第668回 はじめは都会暮らしの働く女性の苦労話かと思わせておいて、ヒロインが田舎の夫の実家の傍に住むようになった段階から突如雲行きが怪しくなる。 彼女の回りでは蝉が狂ったように泣き喚き、至るところにあいている穴だの正体不明の奇…
照る日曇る日第667回 かつて一世を風靡した「話の特集」の編集長による自称、辞世の書である。 これまで波瀾万丈の人世を送ってきたが、いよいよ年貢の納め時なので、付き合いのあった著名な作家たちの人となりについて、嘘偽りを交えずにありのままを告…
ある晴れた日に第226回 「いやぁ短歌っていいですねえ」と水野晴郎さんのように言ってみる 苔がむすただ一瞬の隙もなく古希爺どもの石は転がる 糟糠の妻の水着は赤か青か三度迷いて赤を推したり これだけは成熟したくないと思うことあり胸のうち 灰色の空…
ある晴れた日に第225回 坂道を転げ落ちるな菜の花忌 アンドラという小国くらいがよし DJが歯の浮くような英語で一曲紹介 ヒエラルキーの最上層ほど悪い奴下には無力なリトル・ピープルばかり 見てご覧屑でしかない人間が星屑のように輝く姿を アバド指揮モ…
ある晴れた日に第224回 夢の中で、もうかなり前に亡くなった近藤さんを見かけた。 近藤さんの顔は茶色の斑点入りのヴェールのようなもので覆われていたためにちらとしか見えなかったが、たしかにそれは近藤さんだった。 彼女が腰をおろしていた丸いテーブ…
bowyow cine-archives vol.636 キートン選手はむかしウディ・アレンの映画に出ていた頃から才女の風を吹かしていたから自分でも監督したかったのだろうが、脚本のネタが早くに割れ過ぎているので、どうにも鼻白む。 つまり病に冒された母親が死ぬのを知っ…
照る日曇る日第666回 私がこれまで読んで来たマンローの小説に、駄作は一本もありませんでしたが、これは恐るべきことのように思われます。 マンローの小説は、そのすべてが短編、あるいは長くても中編なのに、まるで長編小説のような長いリーチとしたた…
ある晴れた日に第223回&闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.635 ビヤンヴニュ! ようこそモンパルナス・ビヤンヴニュ駅へ! ようこそ黄泉の国へ! 地下鉄に轢き殺された人たちは、みな地下鉄の下に隠れ住んでいた。 ACミランの本田選手のように…
ある晴れた日に第222回 「お父さん行ってきます」と出かけたり新年より月給500円の君 「木が3本で森ですよ」と君が言えば「では2本では何ですか」と散髪しながら小林君が訊ねる 最愛のあなたの息子が障がい者ならホーム建設に反対しますか? 生れし子の…
ある晴れた日に第221回 家中のお皿を全部叩き割っちゃえそれで君の気が済むなら カレンダーは貰う物と思いしが買う物となりき会社辞めてから 1966年英国で作られた薔薇プリンセスミチコは優雅なピンク 棟梁の槌音高らかに鳴り響きわれら第三次産業従業者…
ある晴れた日に第220回 無理矢理に遣おうとしたが縊死してた古式豊かな旧字旧仮名 無理矢理に旧字旧仮名で歌詠めばラテン語で書くローマ人の心地す 様々なネタが現れ次々に消ゆ回転寿司のように一年終われり 誰からも忘れられた人をしみじみと思い出している…
ある晴れた日に第219回 鎌倉の八幡様の大通り恋人の手を引き関取が行く 親よりも年長のガードマンを従えて御成通りの銀行ウーマン 町角の小さきイタリアレストランを応援したいが駐車場がない 鎌倉の小町通りの遺跡発掘現場身の丈掘れば鎌倉時代 午後二時…
ある晴れた日に第218回 さよなら台風十八号!と耕君は叫びました。 商人のささやかなる策略はサン・キュー・パーと値決めすること 次々に散歩ボランティアが名乗り出て被災地犬次郎は町内の人気者 考えてみれば我らの平平凡凡たる人生のすべてが空前絶後の…
ある晴れた日に第217回 「かわかわの耕ちゃん」と言ってみる小学5年の君に会えるかと思って 「かわかわのムクちゃん」と呼んでみる02年に死んだ君に会えるかと思って 除草剤を散布された後の土地は茶色く汚染された草一本はえぬ不毛の土地だ われついに…
ある晴れた日に第216回 通りすがりに子供の頭をポンと叩きしポンタのおじさんいずこへ行きしか 腕時計を久しぶりに身につけるお前はずっと私のために動いていたのか 1万円の赤いデジカメが壊れたので9千円の若草色に買い替えました その昔鎌倉に台湾リス…
茫洋物見遊山記第148回 私は六本木ヒルズという建物が大嫌いで、出来るだけ行かないようにしているのだが、いよいよ「ラファエル前派展」が終わるというので重い腰をどっこいしょと上げ、雨を冒してやはり大嫌いなロッポンギの街へ出かけていきました。 …
ある晴れた日に第215回 野に山に花咲く乙女ら耀えど疾く陽は墜ちてペルセポネーの黄昏 儂といい己といい手前といい自分というときの私とは何? 僕って誰? 九十過ぎても僕と言っていた吉田秀和 自閉症の息子が「自閉症って何?」と聞く私が「私とは何?」…
ある晴れた日に第214回 うらうらと光のどけき春の朝アフロディーテは降り立ちにけり 愛する人が死んだ時ワンワン泣く人は良い人なり そうではないか テレビではなかなか良いことをいう豚男もそっと減量しておくれでないか テロップが出るより早く「尾瀬コ…
照る日曇る日第665回 &ある晴れた日に第213回 親が障がい児を持つということは、健常児を持つことに比べて時間的にも経済的にも心理的にも少なからぬ障がいと重荷を担わされることを意味するんだな。 しかし当事者にしてみれば、それを上回るというか…