蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

美神たちの黄昏 第九夜~西暦2014年弥生蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に225

 


坂道を転げ落ちるな菜の花忌

 

アンドラという小国くらいがよし

 

DJが歯の浮くような英語で一曲紹介

 

ヒエラルキーの最上層ほど悪い奴下には無力なリトル・ピープルばかり

 

見てご覧屑でしかない人間が星屑のように輝く姿を

 

アバド指揮モーツアルトのレクイエムを聴く予め用意された告別の歌

 

またしてもニッポンチャチャと浮かれるのか北の国にて五輪はじまる

 

球形の荒野の果てに生きる日よ穴を穿ちて歌を埋める

 

ランランのピアノは影の無い太陽ひんやりとした月影が恋しい

 

軽々に人間の屑呼ばわり出来る人自分が屑とは知らないのではないか

 

自称右翼の国家主義者が積極的平和主義を唱えるとは絶対矛盾の自己同一

 

町内の見知らぬ人と少しずつ知り合いになるうれしさ

 

小泉の自立支援法のせいで障害者はひどいめにあっていると和枝ちゃんは言う

 

コジュケイの大家族が大島さんちから平尾さんの庭へトラップファミリーのように移動していった

 

カシミアの柔らかさに慣れてしまったこの私もはやアクリルを着ることはできない

 

それでもなおこの惑星は浮いている誰かが愛の力を信じているから

 

コルトーショパンあくまで暖かく禍福はあざなえる縄のごと

 

性交のあれやこれやをレポートするここは恥知らず人世劇場

 

ビヨンセが全身の汗を拭いて投げ捨てたタオルを口に押し当ている男

 

結社にて三々五々俳句を詠む人よ国家秘密に抵触するにあらずや

 

「次の順番はこのムシュウーでしょう」と巴里の八百屋にマダム言いけり

 

若獅子の7機がジェラルミンの盾をもてわが額を斬り裂きし傷いまも残れり

 

かわかわのくこうくんといいながら往来をぶらつく人となりにけり

 

八十を過ぎたる歌人が性交の後の思いを詩に綴るその繊細なる放胆さ

 

故郷の仏壇の下の暗がりに怪しく輝く紫水晶ぷんと匂う

 

物置に安置してあるイマージュを取り出してはまた元に仕舞う

 

ぺらぺらと善からぬ企てしゃべりおる顔も口調も嫌いなこの国の宰相

 

良心に照らしていささかも恥じることなきや外国人蔑視差別

 

あれだけのことしてやった見返りがただこれだけとはあれでも人かよ

 

最新型のゴジラが突如現れて憎まれ者の顔踏み潰すだろう

 

瞬きしかできぬ身体になりつつもなお悪巧みする心の暗闇

 

 

 

なにゆえに子猫を殺したと新聞に書く百閒のノラ読み給え 蝶人