蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2014年霜月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第271回 小学生が赤と青の旗を振っているサラ・ブライトマンのTime to say good byに合わせて 若くして死んでしまった中川安奈そのアルト聴く雨の水曜 新しい標札をつけたがわずかに右上がりあえて直さずこれでいいのだ キリコ、キリコ、霧…

青髭公と7人の女~「これでも詩かよ」第110番

ある晴れた日に第270回 白白白白白白白白白と 真っ白に塗りたる部屋に 真っ白な女が一人 青青青青青青青青青 真っ青に塗りたる部屋に 真っ青な女が一人 黄黄黄黄黄黄黄黄黄 真黄色に塗りたる部屋に 真っ黄な女が一人 赤赤赤赤赤赤赤赤赤 真っ赤に塗りたる…

三隅研次監督の「新選組始末記」をみて

bowyow cine-archives vol.736 子母澤完の原作を三隅が映画化したもので、市川雷蔵扮する山崎蒸の目から見た新選組の近藤や土方の思想や言動の矛盾を鋭く糾弾している。 山崎は新選組の密偵で長州藩士の池田屋集結の情報を近藤たちに告げ、そこへ殴り込みを…

国立劇場で「伽羅先代萩」をみて

茫洋物見遊山記第161回 小雨ぱらつく半蔵門で「伽羅先代萩」の千穐楽を見物しました。 この歌舞伎は、仙台藩のお家騒動を種にしたものですが、舞台は室町時代に設定され、山名宗全を後ろ盾にする悪臣仁木弾正一派と細川勝元が味方する善臣渡辺外記、乳人…

「THE ART OF GIUSEPPE SINOPOLI」16枚組を聴いて

音楽千夜一夜第336回 2001年4月20日、ベルリンヘ・ドイツ・オペラで「アイーダ」第3幕を指揮しながら55歳で急逝したシノーポリの管弦楽作品を、独グラモフォンが16枚のCDにまとめています。 ベト9、ブル4、チャイコ6、シューベルト8,9をはじめ…

フレッド・カヴァイエ監督の「すべて彼女のために」をみて

bowyow cine-archives vol.735 わりあい最近の仏蘭西映画である。無実なのに殺人罪で服役中の細君を移送中に拉致し、子供と3人で海外に逃亡する高校教師の驚くべき冒険物語である。 細君は絶望のあまり自殺を図っており、生命の危険もある。そこで万策尽き…

鎌倉十二所を歩く その1 光触寺の巻

茫洋物見遊山記第160回&鎌倉ちょっと不思議な物語第326回 このお寺は、鎌倉時代に比企が谷にできた真言宗「岩蔵寺」が前身で、弘安2年1279年に一遍上人が遊行の途中、鎌倉に入ったときに、真言宗僧の作阿上人が一遍に帰依して時宗に改め、念仏道…

家族の肖像 その5~「これでも詩かよ」第109番

ある晴れた日に第269回 真っ青な空はつまらない。雲がないかと探してしまう。 真っ白な家はつまらない。偽善者が住んでいるのではないか、と思われてしまう。 昔むかしあるところに、夫婦者が住んでいました。 夫「さあ君が手作りした標札を、我が家の入…

マイケル・ホフマン監督の「終着駅 トルストイ最後の旅」をみて

bowyow cine-archives vol.734 世界的な文豪のむごたらしい最晩年を、近侍した主人公の若き秘書の目を通してドキュメンタリー風に描く英語で喋る独露合作映画。 貴族でありながら農奴を解放しより自由で平等な理想世界を夢みる老作家と彼の思想に心酔するト…

トマス・ピンチョン著・佐藤良明訳「重力の虹」下巻を読んで

照る日曇る日第737回 佐藤良明氏の手になる1441頁を読みに読んで、ついに読み終わっても、この小説のテーマはいったい何であり、題名の「重力の虹」とはなんのことであったのか? 死ぬ間際の走馬灯のように脳内細胞をはげしく点滅させても、どんなイ…

ヘンリー・ハサウェイ監督の「ナイアガラ」をみて

bowyow cine-archives vol.733 ちょっとおつむの具合がおかしくなったジョゼフ・コットンがどことなく色情狂的な愛妻マリリン・モンローとその浮気相手を殺してしまう非常に暗い夫婦喧嘩の話だが、なんせそんな面白くもないプロットよりも、天下の名勝ナイア…

トニーノ・ヴァレリ監督の「怒りの荒野」をみて

bowyow cine-archives vol.732 しがないおわい屋をやっていた弱虫の青年ジュリアーノ・ジェンマが必殺の殺し屋リー・ヴァン・クリーフに見出されて一人前のガンマンになりあがり、やがてお師匠さんを見事にやっつけて目出度しめでたし一巻の終わりというマカ…

フランソワ・トリュフォー監督の「華氏451」をみて

bowyow cine-archives vol.731 ドラエもん 僕らが何気なく読み親しんでいる書物を敵とみなし、それを焚書する消防士(オスカー・ウエルナー)が読書の魅力にめざめ、1冊の本を丸暗記することによって後世に伝える反権力の文化闘争に挺身するまでを描いてい…

廣木隆一監督の「機関車先生」をみて

bowyow cine-archives vol.730 タイトルは印象的だが、口をきかん先生が離島に赴任してきたので、その渾名が「機関車先生」になるなんて子供ではなく広告のコピーライターの発想のような気がする。 出だしはとてもいい感じだが、剣道の試合に出るところから…

「デ・キリコ展」をみて、あるいは「キリコのタンゴ」

ある晴れた日に第268回&茫洋物見遊山記第159回 福音書的な静物、謎めいた憂愁、遠い友からの挨拶、 剣闘士の休息、白い馬、谷間の家具、 剣闘士の戦闘、イーザの肖像、古代的なヌード 「ピカソが畏れた。ダリが憧れた。」 というのがこの展覧会のキャ…

ロベルト・シュヴェンケ監督の「フライトプラン」をみて

bowyow cine-archives vol.729 久しぶりに見たジョデイ・フォスターは、やっぱりだいぶ年をとっていた。 ハリウッド女優の多くは年をとると仕事が急激になくなるからかつてバリバリに活動していたこの人でも、生活は大変なのではなかろうかと、余計なことを…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第16回

西暦2014年神無月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.188 新橋の街を歩いてその変貌に驚く。自分が行動の拠点にしていた場所や店がみな消え失せてしまった。10/31 ぐあんばれ青木ロイヤルズ。いまこそ乾坤一擲、一打逆転のときなるぞ。…

トマス・ピンチョン著「重力の虹」上巻を読んで

照る日曇る日第736回 ナチス・ドイツ特製のⅤ2ロケットが闇をつんざいて落下する1944年冬のロンドンを舞台に繰り広げられる、血沸き肉躍る、はちゃめちゃ大冒険スラップスティック百科全書的世界探索冒険小説のはじまりはじまりヰ。 と書きだしたもの…

フランシス・フォード・コッポラ監督の「レインメーカー」をみて

bowyow cine-archives vol.728 マット・デイモン選手が口をぼおおうと開けて、なかなか閉めないのを見ると、こいつはうすら馬鹿ではないかと思って、それがどんな映画でも興ざめしてしまうのですが、この作品ではコッポラの演出のおかげで、そのウシュクダラ…

ハワード・ホークス監督の「紳士は金髪がお好き」をみて

bowyow cine-archives vol.727 スラムで育って踊り子になったマリリン・モンローとジェーン・ラッセルが金持ちにうまくとりいってめでたく一緒になるまでの喜劇映画であるが、才人ハワード・ホークスのメガフォンをもってしてもあまり面白くない。 多少とも…

さとう三千魚著「詩集 はなとゆめ」を読んで~「これでも詩かよ」第114番

ある晴れた日に 第267回&照る日曇る日第735回 曇った窓ガラスを人差し指でそっと拭くと、蒸気機関車が行く沿線の夜景が 詩人の顔と重なるようにして、次々に広がってくる。 これまで見たこともない、新しい相貌をそなえて。 まず、ぼおおと浮かび上が…

駆込み訴え その3~「これでも詩かよ」第113番

ある晴れた日に 第266回&鎌倉ちょっと不思議な物語第325回 「鎌倉市河川および相模湾における天然ウナギの捕獲を禁じ、違反者を厳しく罰すべし」 今年2014年の6月、国際自然保護連合のレッドリストに、ニホンウナギが絶滅危惧種として挙げられた…

フレッド・スケビシ監督の「ミスター・ベースボール」をみて

bowyow cine-archives vol.726 トム・セレック扮するアメリカの大リーガーが都落ちして、日米野球のカルチャーショックに戸惑いながら、中日ドラゴンズで奇跡の大活躍を遂げ、ドラゴンズの高倉健監督に優勝をプレゼントして、彼の愛娘ともども晴れて古巣へ帰…

鎌倉文学館の「山崎方代展」をみて

茫洋物見遊山記第158回&鎌倉ちょっと不思議な物語第324回 鎌倉文学館では12月7日まで「生き放題、死に放題、山崎方代の歌展」が開催されています。 昔からほんのひと握りの人にしか知られていなかったこの繊細な野人の歌が、大勢の人々に知られ、…

森田芳光監督の「武士の家計簿」をみて

bowyow cine-archives vol.725 サザエさん 武家の経済生活に光を当てた磯田道史の原作を、才人森田が見事に映画にしましたね。 マスオさん 主人公を演じた堺雅人が父親役の中村雅俊ともども好演。 波平 とくに破綻した名家の危機を資産をすべて売り払うとい…

鎌倉国宝館の「菅原道真展」をみて  

茫洋物見遊山記第157回&鎌倉ちょっと不思議な物語第323回 東国の天神信仰の中心にあった荏柄天神社に伝来した宝物の数々が陳列されている「鎌倉ゆかりの天神さま」特別展です。 チラシには、「菅原道真(845~903)を祭神とする天神は、はじめ怨霊神と…

2人の異星人~「これでも詩かよ」第107番

ある晴れた日に 第265回 あたしはデング この惑星にちょっくらやってきた異星人 この星では一握りのお金持ちが 大勢の貧乏人を完全に牛耳っている そして富める者は、ますます富み 貧しい者は、ますます貧乏になってゆく あたしはエボラ この惑星にちょっ…

東京国立近代美術館にて「菱田春草展」をみて

茫洋物見遊山記第156回 閉会ぎりぎりになってしまいましたが、本日11月3日までという「菱田春草展」を飛び込みでみてまいりました。 同時代を長く生き抜いた横山大観とは生涯を通じての「朦朧体」時代からの盟友でしたが、改めて菱田春草の代表作を通…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第15回

西暦2014年長月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.187 社会党の土井元党首が85歳で亡くなった。政治思想は正反対だが今の自民党の陰欝な女性政治家と違って天気晴朗な印象を受ける清々しい人だった。黙祷。9/30 評判の悪いフジテレ…

家族の肖像 その4~「これでも詩かよ」第106番

ある晴れた日に 第264回 むかし男ありき。 その男、心貧しき者なりき。 男には女ありき。 女、男の心なき仕打ちを受けて心病みたり。 男と女には息子ありき。 心優しき息子なりき。 女「ああ苦しい、息ができない。ああ、ああ」 男 知らん顔してパソコン…