蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2013年如月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第122回 恥ずかしそうに咲いていました「スーパースタア」という名の赤きバラ 45年営業したる横須賀ヤジマレコード閉店のお知らせ 驚いた、驚いた、そこにいたのはテン・リトル・インディアンズ 欲しかった輸入盤CDに高値つくあな憎た…

エミール・アルドリーノ監督の「天使にラブソングを!」前後編を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.408&409 映画の終わりではローマ法王まで登場、修道院のシスターになりすましたウーピー・ゴールドバーグが聖歌隊で大活躍するわけだが、ここで気になったのはその聖歌隊の役割と位置付けだ。 ゴールドバーグはゴスペ…

山内鉄也監督の「忍者狩り」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.407 近藤十四郎、田村高広、山城新伍、佐藤慶などが登場するモノクロ時代劇である。 津島利章という人のチエロの重低音を多用する現代音楽がユニークだが、映画全体の雰囲気とはうらはらである。 結局どこといって見る…

チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルSACRED MUSIC& OPERA11枚組CDを聴いて

♪音楽千夜一夜第297回 EMIの廉価盤で聴くセルジュゥ・チェリビダッケと手兵ミュンヘン・フィルの最強コンビで聴くバッハ「ロ短調ミサ曲」、モザールやヴェルディ、フォレ、ブラームスによる「レクイエム」、ワーグナーの「トリスタン」「マイスタージンガー…

大島渚監督の「絞死刑」を観て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.406 殺人を犯した人間を処罰するために、国家(が一体何者であるかはここでは問わないが)はみずからが再び殺人を犯す。すると殺人犯は殺されるべきであると定めたのは国家であるから、国家自身も死刑に処されなければ…

鎌倉雪の下の「川喜多映画記念館」を訪ねて

茫洋物見遊山記第105回&鎌倉ちょっと不思議な物語第274回&闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.405 ちょうどいま開催されている大島渚追悼の映画を観るために、「川喜多映画記念館」を訪れました。 館内には最近亡くなった偉大な創造者の業績を示す映画…

MARIO DEL MONACO THE ROMAN HERO「マリオ・モナコ10枚組CDセット」を聴いて

♪音楽千夜一夜第296回 お馴染みの独membranレーベルによる超廉価盤ですが、その内容は価格の百層倍もありまっせ。たとえばヴェルディのオペラ「オテロ」の冒頭の「Esultate!(喜べ!)」を聴いてみれば彼のテナーの物凄さが分かるだろう。 そのヴェルディの…

佐々木健「ジーズ・フーリッシュ・シングス」展をみて

茫洋物見遊山記第104回 東京でいちばん美女子が多いといわれる中目黒にあって、もっともお洒落なギャラリー「青山目黒」における作家の2回目の個展です。 2年前の前回は開催中に例の東日本大震災が発生し、会場が大揺れとなった由で心配しましたが、今回は…

清水宏監督の「有りがたうさん」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.404 原作は伊豆の踊子の川端康成。伊豆の峠道をのんびりと走る乗り合いバスの運転手と乗客たちの交情の物語で、踊り子らしき女性も登場します。 上原謙の運転手はいまどき珍しい気配りの人で、この街道筋の人たち全部…

森一生監督の「悪名市場」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.403 勝新太郎の浅吉親分と、田宮次郎のモートルの貞の凸凹コンビに加えてあの幻の女優嵯峨三智子が活躍する任侠シリーズの第6弾。この男を蟲惑してやまない妖婦のアップが出てくる度によくぞこのフィルムを残しておい…

今井正監督の「喜劇にっぽんのおばあちゃん」を観て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.402 これだけ芸達者な老人を動員すればさぞや演出が大変だったろうと察せられるが、なかなかどうして名匠のメガホンは鮮やかな切れ味を見せる。 主役はミヤコ蝶々と北林谷栄で、圧倒的な名演を見せている。ヒステリッ…

上田正昭著「私の日本古代史上巻」を読んで

照る日曇る日 第570回 著者の長年に亘る歴史研究の総決算というべき通史の前半部である。「天皇とは何者か」、という惹句につられて読みはじめたが、その回答などどこにも書かれていないので閉口する。 こういう「売らんかな」のキャッチフレーズは、たい…

鏑木清方記念美術館の「描かれた女性美」展を見て

茫洋物見遊山記第103回&鎌倉ちょっと不思議な物語第273回 鎌倉小町の横丁にてひっそり閑と開催されている収蔵品展を鑑賞しました。今回の目玉は樋口一葉の小説「たけくらべ」のヒロイン美登利が墳墓に寄り添う「一葉女史の墓」ですが、実に大胆不敵な着想と…

おたまじゃくしはカエルの子?

そんな私のここだけの話 バガテルop162&鎌倉ちょっと不思議な物語第272回 毎年1月の末か2月の頭には近所の原っぱでカエルが産卵するので、その環境を整えてやることにしている。といっても大したことではない。スコップで水たまりのごみや落ち葉や泥を掻…

フランク・キャプラ監督の「素晴らしき哉 人生!」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.401 主役のジェームズ・スチュアートが熱血正義漢ぶりを発揮して町内の顔役と体を張って闘うのだが、ふとしたことから(この叔父が銀行で大金を顔役に拾われてしまう、というご都合主義は良くない)会社倒産、一家離散…

鎌倉芸術館の「肉筆浮世絵の美」展を見て

茫洋物見遊山記第102回&鎌倉ちょっと不思議な物語第271回 今月の11日まで開催されていたのは毎度おなじみの「氏家浮世絵コレクション」から抄出された、目にもけざやかなる肉筆画の数々。 去年と同じ北斎の「桜に鷲図」、「酔余美人図」、鈴木春信の「桜…

クリスチャン・ジャック監督の「花咲ける騎士道」を観て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.400 糞真面目だった「赤と黒」とは打って変わって、イケメン、ジェラール・フィリップが楽しげに馬に乗ったり、チャンチャンバラバラしているが、そんなことよりイタリアの女優ジーナ・ロロブリジダの豊満な肢体に酔い…

中島莞爾監督の「クローンは故郷をめざす」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.399 殉職した宇宙飛行士をクローンとして再生するというSF映画であるが、話が分かりにくい上に陰湿で画面が暗く、録画したビデオを倍速で見たのだが、それでも話の進行がもたもたしていて、ともかく面白くもおかしく…

ハロルド・ベッカー監督の「タップス」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.398 名門陸軍幼年学校のエリート少佐ティモシー・ハットンに率いられた若き兵士たちが、名物校長ジョージ・C・スコットの影響を受けて国家権力と敵対する姿を描く。 いくら名門でも理事会が学校を解散して土地を不動…

ジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.397 いっぱい喰わされた詐欺師が、もっと大物の諸悪の根源みたいな元締めをいっぱい喰わせるという一大策略映画。非常に良く出来たプロットと演出で最後まで楽しませてくれるが、よーく考えると、はてなという問題もあ…

ブライアン・シンガー監督の「Ⅹ―MEN」「Ⅹ―MEN2」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.395&vol.396 このところ安易な想像力が産んだ低劣な映像作品を見る、いな見せられる機会が増えてきたがこれもその好個の一例。 人類が進化して誕生した突然変異体(ミュータント)が巻き起こすさまざまな事件と葛藤を…

ブライアン・シンガー監督の「Ⅹ―MEN」「Ⅹ―MEN2」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.395&vol.396 このところ安易な想像力が産んだ低劣な映像作品を見る、いな見せられる機会が増えてきたがこれもその好個の一例。 人類が進化して誕生した突然変異体(ミュータント)が巻き起こすさまざまな事件と葛藤を…

ロビン・スウィコード監督の「ジェーン・オースティンの読書会」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.394 夫に去られて傷心している中年の女性を慰めようとその娘や友人たち数人が毎月ジェーン・オースティンの小説を読んで各自の家に集まって感想を語り合う会を始めた。 そのなかに混じり込んだたった一人の若い男性を…

天童荒太著「歓喜の仔」上下巻を読んで

照る日曇る日 第568回&569回 「歓喜」というタイトル通り、ベートーヴェンの第9交響曲の第4楽章の後半でうたわれ、「歓喜に寄す」の歌が重要な伏線であり、ライトモチーフともなっている。 人間の友愛とその喜びを神に向かって感謝する詩は、無神論…

ジョン・ミリアス監督の「ビッグ・ウェンズディ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.393 去年の暮れに逗子に引っ越していった若くてとてもカッコいい隣の夫婦は、真冬でもよく材木座の海岸などでサーフィンを楽しんでいたようだったが、この映画では女子供とは無関係な男だけの孤絶した世界が描かれてい…

マイケル・カーティス監督の「エジプト人」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.392 これは最初から最後まで興味深いあるエジプト人の生涯のものがたり。フィンランドの小説家ミカ・ワルタリの原作を「カサブランカ」のマイケル・カーティス監督が演出、かの名物プロデューサー、ダリル・F・ザナッ…

荻上直子監督の「めがね」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.391 どこからか飄然と南海の孤島にやって来た謎の女性、そして彼女をとりまくこれまた不可思議な民宿の男女たち。 彼らはほんの短い断片的な会話しか交わさず、従って登場人物がどのような生活をしているのかはほとん…

ボッカッチョ著「デカメロン」を読んで

照る日曇る日第567回 ボッカッチョとは俺のことかとボッカチヨいい。ではないけれど、世界的に有名な大作家による大小説を平川祐弘氏の最新訳で読みました。 これは世に多く流布する滑稽風流夢譚のたぐい、たとえばバルザック選手のそれとは中身が決定的に違…

「基礎から学べる広告の総合講座2013」を読んで 照る日曇る日第566回&広告戯評第18回 日経広告研究所では、毎年夏に超高価な参加料で広告宣伝にかんする連続集中講座を行っているのだが、それを年末に簡にして要を得た安価な1冊の報告書にまとめてくれる。…

チャールズ・デ・ラウジリカ監督の「デンジャラス・デイズ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.390 リドリー・スコットの歴史に残る名作「ブレード・ランナー」がいかなる危険と困難のもとに製作されたのかを関係者の証言をもとに描き出した迫真のドキュメンタリー映画である。 もちろん映画自体を立ち上げ差配す…