蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2010年弥生茫洋花鳥風月人情紙風船

ある晴れた日に 第73回 梅の花花との間に萼ありて春日遅遅日光写真待つ心面白うてやがて悲しき水の歌3月や歯科皮膚科整形外科に日参す椿落ち鴨泳ぎタテハ飛び鶯が鳴く弥生廿日辛夷咲き野鴨繕い黄蝶舞い鶯鳴くなり弥生の廿日桜咲き瑠璃シジミ飛びおたま泳…

「演劇集団 円」を応援しませう

バガテルop124円は1975年に芥川比呂志を中心に劇団雲から独立した演劇団で、岸田今日子、南美江などが活躍、現在はテレビに出ずっぱりの橋爪功を柱に、松本留美、有川博、立石涼子、朴璐美などを擁しています。そんなことはどうでもよいのですが、じつ…

コーリン・デービス指揮コベントガーデン「螺旋の回転」を視聴する

♪音楽千夜一夜第124回古いレーザーディスクを引っ張り出して、DVDに焼きながら珍しい演奏を聴きました。 コーリン・デービス指揮コベントガーデンのロイヤル・オペラが少人数で演奏するベンジャミン・ブリテン作曲のオペラ「螺旋の回転」に、ペートル…

ブーレーズ指揮ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」を視聴して

♪音楽千夜一夜第123回数々の印象深い銘品をつくってくれたドビュッシーですが、やはりこれがいちばんの代表作でせう。あれほど傾倒したワーグナーから足を洗い、独立独歩で創造した新しい楽の音がここには香り高く鳴り響いています。指揮者ブーレーズの評…

森健著「就活って何だ」を読んで

照る日曇る日第335回企業の公共性&社会正義感の欠如と悪徳人材派遣会社の終わりなき強欲陰謀が主因となって、そこに大学と学生の思惑が入り乱れ、史上最悪最凶の末期的症状を呈している現在の就職戦線ですが、この本はそのいっぽうの当事者である企業の…

カラヤン指揮ウイーン国立歌劇場の「薔薇の騎士」を視聴する

♪音楽千夜一夜第122回これは1960年8月のザルツブルク音楽祭にかけられたシュトラウスの名作オペラの歴史的公演の記録です。出演は元帥夫人にシュヴァルツコップだけでなく、ゾフィーがローテンベルガー、オクタヴィアンのユリナッチの女性陣に加えて…

ブレゲンツ音楽祭の「トロヴァトーレ」を視聴して

♪音楽千夜一夜第121回独スイス国境のオーストリアのボーデン湖上で二〇〇六年の真夏に開催されたブレゲンツ音楽祭の実況録画です。演出はロバート・カーセンという人ですが、湖上に巨大な船のような石油コンビナートのような構造物を設置して、演技はその…

スコット・フィッツジエラルド著・村上春樹訳「冬の夢」を読んで

照る日曇る日第335回フィッツジエラルドが彼の代表作を書く前に、いわば練習問題のようにすらすら書いた短編小説が5本並んでいます。村上春樹によれば、彼はみじかいものならだいたい1日で書き飛ばしたというのですが、その切れ味の鋭さといったら芥川…

藤原歌劇団の「ジョコンダ」を視聴して

♪音楽千夜一夜第120回 昨二〇〇九年の一月三一日に東京文化会館で行われたポンキエルリのオペラ「ジョコンダ」のあら珍しや四幕版の公演をビデオで見ました。まず特筆すべきは指揮者菊池彦展と東フィルの好演です。この指揮者がどのようなキャリアの人か…

神奈川県立近代美術館で「松谷武判展」を見る

茫洋物見遊山記第20回&鎌倉ちょっと不思議な物語第212回松谷武判は1937年大阪生まれのアーチスト。1954年より日本画を学び、戦後はあの伝説的な具体美術協会の前衛美術運動に参加し、1966年以降は「人の真似をするな。誰もやらないことを…

平成の隠者、東京をさすらう 川本三郎著「きのふの東京、けふの東京

照る日曇る日第334回 川本三郎という人は、嫌なことは、しない、書かない。ただ好きな人とだけ付き合い、好きなことだけをして、好きなことだけを記事にして生活している、と聞いたことがあります。まことにうらやましい平成の隠者、聖賢のような存在です…

アラン・J・パクラ監督「大統領の陰謀」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.28この映画では、70年代前半の合衆国を驚倒させたウオーターゲート事件の顛末を事実に則して描いています。なんとワシントンポスト紙の2人の新米記者の執拗な取材とスクープが、ニクソン大統領を失脚させるに至るの…

木村大作監督の「剱岳」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.27新田次郎原作の山岳小説を、ベテラン映像キャメラマンが初めて監督しました。噂ではかなり過酷なロケだったそうで、特に雪山の登攀の際の滑落や猛烈な吹雪のシーンなどはほとんど命懸けの撮影だったのではないでし…

フランツ・ウエルザー・メスト指揮チュウリヒ劇場管「ドン・ジョヴァ

♪音楽千夜一夜第119回止せばいいのに、昨日メタメタに悪口を言った同じ指揮者と団体によるモーツアルトを聴いてみました。これも序曲が軽薄そのもので、テンポだけはいっちょまえにフルトヴェングラーと同じくらいの遅さですが、コクもタメもないまるで蒸…

フランツ・ウエルザー・メスト指揮チュウリヒ劇場管「カルメン」を視

♪音楽千夜一夜第118回2008年6月下旬から7月1日までかけてスイスのチュウリヒ歌劇場で行われた公演を収録・編集したビデオを見ました。指揮者のメストはこのビゼーの名作オペラを♪すいすいすいったららったすらすらすいのすい、とまるで楽譜の内部…

「ドイツグラモフォン社創立111周年記念55CDセレクション」を聴

♪音楽千夜一夜第117回 1898年の設立から2009年に至る111年間にこのクラッシックの名門レーベルが世に送り出した55枚のレコード&CDを集めた記念碑的なコレコションです。アルファベット順にざっとご紹介しますと、まずはアバドの隠れたブ…

鶴岡八幡宮の大銀杏見物

茫洋物見遊山記第19回&鎌倉ちょっと不思議な物語第211回遅まきながら先日の強風で倒れてしまった鎌倉八幡宮の大銀杏を見物に行ってきました。じつは鎌倉には、鎌倉時代の遺物としては大仏様とこの大銀杏くらいしか残されていませんから、今回の事件は…

佐々木秀一著「ロミー」を読んで

照る日曇る日第333回 1938年にナチ占領下のウイーンに生まれ、1982年に43歳でパリ7区バルベ・ド・ジュイ通り11番地のアパルトマンで死んだ女優ロミー・シュナイダーの本格的な伝記です。ロミーと聞いて誰もが思い出すのは、アラン・ドロンと…

胸を打つソプラノとピアノの調べ 吉田秀和著「永遠の故郷 真昼」を

照る日曇る日第332回&♪音楽千夜一夜第116回 おそらく遺作のつもりで雑誌「すばる」で連載されている(であろう)吉田氏の最新作「永遠の故郷」の第3作です。「夜」から始まり、「薄明」に続くこの「真昼」編は、死の亡き父君に献呈され、主としてマ…

三枝昂之著「啄木 ふるさとの空遠みかも」を読んで

照る日曇る日第331回明治41年4月25日、思い出多き函館の街に別れを告げてからちょうど1450日目の明治45年4月13日、天才歌人石川啄木は、折しも八重桜が満開の東京小石川区久堅町の借家の貸間で、父と妻と友人若山牧水に見守られながら、あた…

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第38回

bowyow megalomania theater vol.1「カレーおいしいですか」「おいしいです……。えーと、えーと、岳君桜木町のドリームランド行きたい」「え、ドリームランドって桜木町のどこにあるの?」「えーと、えーとね、桜木町にある」「駅のそばですか?」「駅のそば…

ハイティンク指揮ベルリン・フィルで「マーラー第3番」を視聴する

♪音楽千夜一夜第115回 マーラーのニ短調交響曲は、全部で6つの楽章で構成されています。はじめの3つの楽章は、じゅげむじゅげむちんぷんかんぷん、一体何が言いたかったのかマーラー自身もよく分からなかったと思いますが、アルトが深々と「おお人間よ、…

ジョン・フォード監督の「わが谷は緑なりき」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.26名匠ジョン・フォードが監督したこの映画の原題は「How Green Was My Valley」です。 直訳すれば「私の谷はなんと緑色だったことよ!」という意味なのでしょうが、これを 「わが谷は緑なりき」とさらりと文語体で言…

ビリー・ワイルダーの「アパートの鍵貸します」を見ながら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.25まず原題は確か「アパートメント」というのですが、これを「アパートの鍵貸します」とした宣伝マンは偉い。こっちのほうが事の本質をとらえています。 それから誰もがいうように、名優ジャック・レモンとシャリー・…

「網野善彦著作集別巻」を読んで

照る日曇る日第330回マルクスは「ドイツイデオロギー」の中で、「古代が都市から出発したのに対して、中世は農村から出発した」と述べましたが、網野善彦氏の駆け足の精力的な生涯は、この有名なテーゼをあくなき文献調査と実証的研究の積み重ねを通じて…

東博で「長谷川等伯展」を見る

茫洋物見遊山記第18回没後400年を記念して東京国立博物館で開催中の「長谷川等伯特別展」を見ました。 彼の代表作として有名な6曲1双の「松林図屏風」はこの博物館の所蔵品なのでこれまでも何回か見物してきたのですが、まずは再晩年の傑作から鑑賞し…

塚原琢哉写真展「シレジア」を見て

茫洋物見遊山記第17回シレジアというのはポーランドの地名です。かつてこの地方には、19世紀の終わりから20世紀の終わりごろまで、欧州の重化学工業を支える巨大な炭坑がありました。しかしシレジアは、現在ではわが国の三井三池と同様、生産施設も工…

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第37回

bowyow megalomania theater vol.1 「岳君、南武線に乗ったことある?」「ないお。ありません」「南武線に乗りたい?」「乗りたいです」「岳君、京浜東北線乗った?」「乗りました」「新型ですか旧型ですか」「旧型です」「新型は乗った?」「乗れなかったお」…

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第36回

bowyow megalomania theater vol.1 「そうか、西武新宿線は南武線に似ているのか。岳君、西武新宿線に乗ったことある?」「ありますよ」「いつ?」「9月3日に武蔵療養所へ行って広瀬先生に会いに行ったお」「広瀬先生はなんておっしゃった?」「こんにちは…

「新版クラシックCDの名盤演奏家篇」を読んで

照る日曇る日第329回&♪音楽千夜一夜第114回音楽評論家の宇野功芳、中野雄、福島章恭の3氏によるクラシックCD批評です。私の好き嫌いや評価とは異なる部分もありますが、小沢征爾の音楽の程度がいかに低いか、アイザック・スターンを中核とするユダ…