蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

西暦2015年卯月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第304回 斉藤斎藤の「NHK短歌」終りぬこれだけは受信料払う値打あったな 小説を一冊書くのは大変なことまして面白い小説となればなおさらのこと 金曜の午前中に訪れたがとっくに閉店していたよ「カフェ金曜の朝」 杜若菫連翹藪椿花咲き…

蛇~「これでも詩かよ」第135番

ある晴れた日に第303回 へ び な が す ぎ る な が す ぎ る 蛇長く長長き夜をひとりCOME ON寝む 蝶人

てふてふが海峡を飛んで行った~「これでも詩かよ」第134番 ある晴れた日に第302回 てふてふが海峡を飛んで行った て ふ て ふ て ふ 波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波波 日一日日本嫌いになる日本人多し日…

新連載「十年の後」 第1回

バガテル-そんな私のここだけの話op.197 四月二六日の巻 2006年4月26日水曜日 曇 B社の原稿リライトあと15P。締め切りを5月8日に延ばしてもらう。久しぶりに前田氏よりメールありて資生堂ワードの記録を送付せよと。 2007年4月26日木曜…

北野武監督のヤクザ映画2本立

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.796&797 ○北野武監督の「OUTRAGEアウトレージ」をみて 昭和の任侠映画の典型的な姿形を平成の御代の現代的な感覚で洗練させたもの。 極道に生きる者たちの悲哀と愚かさをクールに描いてあますところがない。 洗練とい…

深作欣二監督のヤクザ映画3本立

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.793&794&795 ○深作欣二監督の「新仁義なき戦い」をみて 広島県呉のヤクザの抗争物語だが、これを見ているとヤクザも軍隊も会社も組織というものはみな上意下達の垂直構造によって貫徹されている点で共通していることが…

鈴木清順監督の3つの作品をみる

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.790&791&792 ○鈴木清順監督の「けんかえれじい」をみて 岡山から会津若松へと、高橋演じるバンカラ旧制中学生がやたら喧嘩を繰り返すのだが、最後は2.26事件を知って会津若松のカフェで目撃した北一輝に会いに行こうと…

園子温監督の3つの作品をみる

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.787&788&789 ○園子温監督の「冷たい熱帯魚」をみて 私はこの映画を見ながらむかし当時の私の憧れの人が「しかし俺たちはまだ人殺しはしていないからな」と笑いながら語ったことを思い出していた。 完璧に自己を実現し…

西暦二〇一五年四月の歌~「これでも詩かよ」第138番

田村隆一著「田村隆一全集6」を読んで ある晴れた日に第301回&照る日曇る日第777回 四月はいちばん残酷な月さ いままで無料だった町内のゴミ出しが 袋1枚80円の有料になってしまった 四月はいちばん残酷な月さ ミルクもヨーグルトもケチャップも…

21世紀のファッション・トレンド その13

ふぁっちょん幻論第93回&広告戯評第21回&バガテル-そんな私のここだけの話op.196 2014年6月下旬にミラノ、パリで開催された2015年春夏メンズコレクションは軽さと快適さの追求。ボッテガ・ヴェネタ、トッズ、カルヴェン、ルイ・ヴィトンなど…

山本周五郎著「青べか物語」を読んで

照る日曇る日第776回 この作家の小説の多くは、時代物のフィクションである。 それらを暇にまかせて読んでいると、もはや誰が主人公のどんな物語であってもハイドンの初期から中期の交響曲と同じような同一性と倦怠を感じるようになってくる。もちろんよ…

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第5巻」を読んで

照る日曇る日第775回 「青葉繁れる」「モッキンポット師ふたたび」と単行本未収録の「紙芝居平家物語」が収められています。 「青葉繁れる」はタイトルが素晴らしいので期待して読んだが、まあ普通の自伝的学生時代振り返り小説でことさらどうということ…

河野多恵子著「みいら採り猟奇譚」を読んで

照る日曇る日第774回 戦中の東京で生活する医師の家系の男女を主人公とする古典的な家庭小説であるが、その正統的な物語展開のど真ん中に、初めは処女のごとく忍び込む猟奇的な嗜虐と被虐体験が、2人の夫婦生活と小説世界の強烈なスパイスとなって、最後…

鎌倉の廃寺、蓮花寺跡を訪ねて

茫洋物見遊山記第177回&鎌倉ちょっと不思議な物語第339回 鎌倉市役所を越えて隧道の先を100メートルほど歩いた右側に昭和九年(1934)三月 に鎌倉町青年団が建てた石碑が立っている。 そこには、「蓮華寺は仁治元年(1240)北条常時の創元にかかり 僧良忠…

佐助稲荷神社と銭洗弁財天を訪ねて

茫洋物見遊山記第176回&鎌倉ちょっと不思議な物語第338回 源頼朝が伊豆に配流されていた折に翁の姿を借りた「隠れ里の稲荷」と名乗る神霊が夢に現れ、平氏への挙兵を勧めたという故事があります。 その託宣に従った頼朝が見事に念願を果たしたあとで…

歌う象さん~「これでも詩かよ」第132番

ある晴れた日に第300回 マンボでマンゴ、マンタがマンポ 呑気な象さん、ゆらゆるスカート! ポンポコ、ポンポコ、チンポコリン! 古来、家というものは、どっしりと鎮座して動かなかった。 ニュートンの万有引力の法則には従うが、動かざること岩のごとし…

なあんも要らへん~「これでも詩かよ」第133番

ある晴れた日に第299回 世を呪い、わが身を呪いながら 苦しい息の下で、老人は叫んだ 要らん、要らん、なあんも要らへん 金も女もダイヤも要らへん 要らん、要らん、なあんも要らへん ごめんで済んだら、警察は要らへん 要らん、要らん、なあんも要らへん…

鎌倉十二所を歩く その8 御坊ケ谷の巻

茫洋物見遊山記第175回&鎌倉ちょっと不思議な物語第337回 御坊ケ谷は十二所神社の北側に広がる谷戸で、路は吉沢川に沿って北上している。 吉沢川には御坊橋が架かっていて、谷戸の奥には「月輪寺」という寺があり、さらにその先の番場谷には北条高時…

今村昌平監督の映画3本をみて

bowyow cine-archives vol.784&785&786 ○今村昌平監督の「にっぽん昆虫記」をみて 今村昌平監督の大きな掌の上で1匹の昆虫と化した左幸子がいくたびも脱皮を繰り返して初めは処女の如く終りは脱兎の如く窯変して7つのヴェールの踊りを踊る。 その左幸子の美…

トヨタの自称高級車「エスクァイア」の広告をみて

広告戯評第20回&バガテル-そんな私のここだけの話op.195 少しく旧聞に属するが旧臘の新聞やテレビで見かけた我が国、いな世界を代表する自動車メーカーの広告である。 そこには赤地に不気味な黒衣のバットマンが登場しており、「日本にも、私も、ここか…

鎌倉冬柏山房を歩いた後で、鎌倉文学館「冬柏山房に集まった文人たち」展をみて

茫洋物見遊山記第174回&鎌倉ちょっと不思議な物語第336回 冬柏山房というのは横浜の名庭園「三渓園」のオーナーであった原三渓の下で働いていた実業家、内山英保(明治元年~昭和二十年)が鎌倉市役所近くの千葉が谷に設けた邸宅で、「冬柏」とは椿の…

渋谷Hikarieで「I`m sorry,please talk more slowly」展をみて

茫洋物見遊山記第175回 ようやく春になって桜も満開になったというのに、昨夜から急に寒くなって関東平野では雪が降ったという寒い朝、私たち夫婦は変貌常ならぬ暗黒未来都市にやってきた。 小山登美夫氏が監修するHikarie Contemporary Art Eyeの第1回…

М・ナイト・シャラマン監督の「シックスセンス」をみて

bowyow cine-archives vol.784 人は死ぬとどうなるのであろうか。肉体は消えても霊魂は存続して現世の周辺をさすらっているのであろうか? この霊魂の有無を認めるか否か、来世を認めるか認めないかは私たちの人世にとっての大問題である。この映画ではその…

夢は第2の人生である 第24回

西暦2014年霜月蝶人酔生夢死幾百夜 アムステルダム港からルテシア号に乗り込んだカラヤンは、NYに到着したらシベリウスの交響曲4番と5番、それに交響詩フィンランディアを振るつもりでいたが、まさか自分が亡命することになるとは夢にも思っていなか…

林真理子著「マイストーリー 私の物語」を読んで

照る日曇る日第774回 この人の小説はほとんど読んだことがないが、たまたま朝日新聞に連載されたので毎朝楽しみながらクイクイ読み終わることができました。 主人公は自費出版の編集者なのだが、彼が勤務している会社がどうやらその業界の最大手といわれ…

又吉直樹著「火花」を読んで

照る日曇る日第773回 サザエさん 最初ちょっと堅苦しい文体に戸惑ってなんども読みなおしたりするけれど、どんどん物語の魅力に惹きつけられて最後まで夢中になって読みとおしてしまうわね。 マスオさん 最近の小説の多くが難しい漢字や堅苦しい表現を廃…

東田直樹著「あるがままに自閉症です」を読んで

照る日曇る日第772回 自閉症者の障がいの特徴は「認知の障がい」「運動の障がい」「社会性発達の障がい」「言語発達の障がい」に加えて「同一性への固執」「常同的な遊びや行動のパターン」などを示すことにある。 脳の中枢神経系に器質障がいがあると推…

鎌倉十二所を歩く その7 朝夷奈切通の巻

茫洋物見遊山記第174回&鎌倉ちょっと不思議な物語第336回 毎度おなじみの散策路なり。 鎌倉には7つの切通があるが、これは武蔵国久良岐郡と相模国鎌倉郡の境にあって、鎌倉と東京湾の六浦(むつら)を結ぶ鎌倉以前からある重要な峠道であり、六浦港は…

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第21回

西暦2015年弥生蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.194 「どう生きたか」ではなく、「どう生きるか」だ。山本周五郎「小説日本婦道記」3/2 動かない家の時代は終わった。「リトル・ホラーショップ」や「踊るサンマ御殿」のようなポンポ…

ラグジュアリー・ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」の新聞広告をみて

広告戯評第19回 &ふぁっちょん幻論第93回 自称右翼の国家主義者にして我らが帝国の偉大なる領袖の世界に冠たる経済政策安倍蚤糞の大戦果の御蔭はどうかは知らないが、最近大手の商業新聞に海外有名ふぁっちょんブランドの広告が散見されるようになったの…