蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2009-01-01から1年間の記事一覧

西暦2009年師走茫洋花鳥風月歌日誌

♪ある晴れた日に 第69回 鎌倉の谷戸に眠れるホロビッツそのCDは朽ち果てにけりエーリッヒのトラウマなかりせば聴けたであろうに「フィガロの結婚」よみがえれクライバー、霊界の騎士像に立ちて「ドンジョバンニ」を振れ!心より心にしみる弦の音シャンド…

MEISTER KONZERTE the master of musicを聞いて

音楽千夜一夜第104回ドイツ・メンブラン社特製の100枚組協奏曲集を、昨日に引き続きついに聞き終わりました。バッハ、バルトークにはじまりシューマン、シューベルト、チャイコフスキー、ヴィヴァルディ、フランツ・ワックスマンに至る250余のコンチエ…

Les 50 plus grands operas du monndeを聞いて

音楽千夜一夜第103回フランスのデッカレーベルから発売されている、世界の代表的なオペラの演奏を収めた100枚組のCDセットをようやく聞き終わりました。こんな重厚長大な代物をどうして買ったのかと尋ねられたら、1枚200円以下の安さに目がくら…

大野和士指揮モネ王立劇場管で「さまよえるオランダ人」を視聴する

音楽千夜一夜第102回これは05年12月20日のベルギー・モネ劇場での公演をライブ収録したもの。CGを得意とするギー・カシアスとかいう男が演出を担当していますが特にどうということはなし。オランダ人をエグルス・シリンズ、ヒロインのゼンタをア…

ジェームス・ジョイス著「若い藝術家の肖像」を読んで

照る日曇る日第319回アイルランドの貧しい家庭に生まれた本書の主人公スチ-ブン・ディーダラスは、幼い時から厳格な宗教教育を受け、神と共に歩む聖職者の道を選ぶことまで考えましたが、やや長じて宗教団体が経営するカレッジに入るや一転して涜神とまで…

G.ガルシア=マルケス著「生きて、語り伝える」を読んで

照る日曇る日第318回「予告された殺人の記録」「百年の孤独」などで有名なコロンビア生まれの作家マルケスの自伝です。本書では彼がさまざまな著書で伝説化した祖父母、父母の来歴とともに、彼自身の少年時代から作家兼新聞記者として徐々に頭角を現して…

梟が鳴く森で 第15回

bowyow megalomania theater vol.1 「僕はこのパルシファルが好きでねえ。なぜかというとパルシファルという主人公が自閉症児者にとっても良く似ているからなんですよ。アダムとイヴがエデンの園で蛇にそそのかされて食べてしまった禁断の樹の実。彼らはそれ…

プッチーニのオペラ映画「ラ・ボエーム」を視聴する

音楽千夜一夜第101回昨日に続いてのプッチーニですが、今日のは1896年に作曲された代表作の「ラ・ボエーム」です。1889年の「エドガー」とは別人のように洗練された技法で、男女の別れを切々と歌い上げます。「ラ・ボエーム」といっても、これは…

プッチーニのオペラ「エドガー」を視聴する

音楽千夜一夜第100回偉大なオペラ作曲家の知られざる「名作」をはじめてビデオで見ましたら、私が持っているCD(イヴ・カラー指揮ニューヨーク・オペラ管の演奏)とは違って4幕物だったのでちょっとびっくりでした。レナータ・スコットがヒロインのフ…

梟が鳴く森で 第14回

bowyow megalomania theater vol.1 「普通の人、(普通の人の定義もキチンとしている訳じゃないけど)、普通の人ならそれこそ先天的に獲得している「状況の認知」「自他の関係の把握」「社会性の認識」といった知的ネットワークが、自閉症児者にはあらかじめ…

梟が鳴く森で 第13回

bowyow megalomania theater vol.1「例えばおたくの岳ちゃん、いや岳君の場合も高校生になるのに毎日JRの路線図ばかり書いていて、山手線の旧型103系や新型の205系のことが気になって気になって仕方がない。普通というと変だけど、普通の人は、毎日多…

山中貞雄監督「丹下左膳余話 百万両の壺」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.22夭折した山中貞雄の現存するたった3本のうちの1本がこれ。昭和10年1935年製作の時代劇ですが、監督本人がこの映画をてんで時代劇とは思っていないために生まれるおもいがけない表現世界の自由闊達さ、天衣無…

お母さん。いま帰ったよ。

バガテルop117 歳月怒涛のごとく来たり、突風のごとく去りゆく。あっと言う間に今年が終わり、すぐに来年がやって来るようです。そのことを、昨日訪れた某住宅改造会社のカレンダーが教えてくれました。さて、毎年特定の芸術家を選び、彼が書き残した和洋…

梟が鳴く森で 第12回

9月25日今日は大好きな横浜線に乗って東神奈川で降りて「小児療育センター」へ行きました。そして、脳波をとりました。脳波のギザギザの線を指差しながら、S先生は、ここいら辺がちょいとゆるいんだとね、と、仰いました。 中脳の辺りに僕のウイークポイ…

梟が鳴く森で 第11回

9月24日おばあちゃんと一緒に、谷口さんちへピアノのお稽古に行きました。谷口さんはお母さんの友だちで、とても親切なおばさんです。僕のような人間があんなに難しい楽器をひけるようになるとは絶対に思っていなかったはずです。僕が5歳で、おばあちゃ…

ポール・オースター著「ガラスの街」を読んで

照る日曇る日第317回アメリカの人気作家の処女小説を柴田元幸氏の翻訳で読みました。この推理小説仕立ての物語は、以下のような特徴を持っているようです。1)本文の英語はいざしらず、文章が春の小川のようにすいすい流れ、物語の推進力と話柄の転換が自…

金原ひとみ著「憂鬱たち」を読んで

照る日曇る日第316回 なんらかの理由で強烈なストレスをこうむり、強迫神経症ではないかと自分を疑っている若い女性、神田憂が、この物語の主人公です。我々ならば別段気にも留めない日常茶飯事に対して、彼女はきわめて敏感に、過剰に反応し、喜怒哀楽が…

滑川の生物調査

鎌倉ちょっと不思議な物語第209回 近所の滑川に散歩に行きましたら、神奈川県の委嘱を受けた河川調査会社の2名のスタッフが、川岸にどっかり座りこんで、すくい取った川の水をにらんでいました。聞けば神奈川県のすべての河川の生物調査をしているという…

渡辺保著「江戸演劇史 上」を読んで

照る日曇る日第315回近世の演劇、能・狂言・歌舞伎を論ずるためには、その淵源をなした中世の演劇の歴史にさかのぼる必要があるということで、本書は慶長3年1598年8月18日の秀吉の死から書き始められています。信長、秀吉、家康という3人の独裁…

梟が鳴く森で 第10回

9月23日今日お父さんが外国人を家へ連れてきました。ジェーン・バーキンさんというきれいな女優さんとそのご主人で映画監督のジャック・ドワイヨンさんです。 ふたりはとっても仲が良くてうらやましいほどでした。僕もあんなきれいな女の人と結婚したいな…

吉田秀和著「之を楽しむ者に如かず」を読む

照る日曇る日第314回&♪音楽千夜一夜第99回覚えず「読む」と書きましたが、活字を読みながら、音楽が流れてくるような文章を、この達人は書くのであります。それはこの人が音楽評論家であって、だからこの人の文章が、音楽に触れているから、というそん…

松本清張原作・堀川弘通監督「黒い画集」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.21 生誕100年記念とかいうことで松本清張原作の映画「黒い画集」をテレビで放映していました。東京の丸ビルの4階にある中堅テキスタイル企業の庶務課長が主人公です。浮気している部下のOLのアパートの近所で顔見…

「三井家のきものと下絵」展を見る

茫洋物見遊山記第7回&ふぁっちょん幻論第54回 新宿の文化学園服飾博物館では、「三井家のきものと下絵」展が12日まで開催されています。三井家は、江戸時代の日本橋で越後屋呉服店を開店し、本邦最大規模の呉服小売店として大繁盛しました。維新後は三…

私が好きなNHKの番組

バガテルop116最近はケイタイのネットに押されて、新聞雑誌のみならずテレビの視聴率もどんどん下がってきたようで、たいへん結構なことだと思っています。つまらないものを無理してみることはありません。いいもの、すきなものだけ目にしておれば、人間…

梟が鳴く森で 第9回

9月22日星の子学園からの帰り、三平君がいっしょにトイレへ行こうと言いました。 僕はあんまり行きたくなかったけれど、三平君が無理矢理言うので仕方なくついて行きました。駅の上のトイレです。 僕たちの他には誰もいませんでした。大の方のトイレにい…

梟が鳴く森で 第8回

9月21日 雨青山アン子は、加藤かおるに言いました。 バーカ、バーカ、あんたなんか、バーカ。 すると、加藤かおると木地かおると木地広康が怒りました。怒って、アッカンベーしました。よせ、よせ、もうよせよ、と、学のパパと御爺さんが言いました。 も…

パッパーノ指揮コヴェントガーデン歌劇場管で「ワルキューレ」を視聴

♪音楽千夜一夜第98回2005年7月18日にロイヤル・アルバートホールで行われた「プロムス05」のワーグナー上演のライブビデオです。プタシド・ゴミンドがはじめてプロムスに登場したことで話題になりましたが、そんなことより(この時点で)彼の衰えを…

佐藤賢一著 小説フランス革命「議会の迷走」を読んで

照る日曇る日第313回 1789年、フランス革命は成就したけれど、革命によって誕生した国民議会は、左・右・中間派に分かれて大混迷を続けています。ジャコバンクラブを中心とした左派は、僧侶をバチカンではなく革命フランスの前に膝まずかせようとして…

梟が鳴く森で 第7回

9月20日緑豊かに風に乗って、光あふれる窓の外、 夢とちからをひとつに結び、 共に生き、共になやみ、 力あわせて進もうよ、我ら星の子、星の子学園。心のどかに風に乗って、命かがやく惑星の彼方、 心とからだをひとつに結ぶ 共に泣き、共に笑い、 手を…

アレクサンダー・ヴェルナー著「カルロス・クライバーある天才指揮者

照る日曇る日第312回&♪音楽千夜一夜第97回昨日の渋谷で思い出しましたが、カルロス・クライバーはよくお忍びで日本に来ていました。東京では渋谷のタワーレコードがお気に入りで、店員さんの話では、アメリカのBEL CANTO SOCIETYから発売されていた、…