蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

私が好きなNHKの番組


バガテルop116

最近はケイタイのネットに押されて、新聞雑誌のみならずテレビの視聴率もどんどん下がってきたようで、たいへん結構なことだと思っています。つまらないものを無理してみることはありません。いいもの、すきなものだけ目にしておれば、人間きっと極楽往生できるでせう。

さて私は民放が苦手なので、テレビはもっぱらNHKを視聴しています。
 NHKのお気に入りは海外ドラマ。最近はやぶにらみピーター・フォークの「刑事コロンボ」と「アグリー・ベティ2」をかかさず見ています。前者のパターンは毎回同じで、犯行と同時に犯人(有名ゲスト)が出てきます。コロンボとやりとりしながらその犯行のトリックがあばかれていく謎解きがお楽しみ。ここまでパターンを固定していながら、毎回最後まで引っ張って行く脚本の力が素晴らしい。初めのころはスピルバーグも書いていました。

「アグリー・ベティ2」は、アメリカ・フェレーラというブスカワいいメキシカンが、NYの一流ファッション誌の編集部に入って大活躍するお話ですが、恋と仕事と人情話のあれやこれやもさることながら、アラフォーだかアラフィフ編集長のバネッサ・ウイリアムズとそのおかまの助手マイケル・ユーリーのポップな衣装が素晴らしい。よほど腕こきのスタイリストがついているのでしょう。

このほか先日終わってしまった「ダメージ3」というグレン・クローズ主演の弁護士物もむちゃくちゃ面白かった。グレン・クローズは悪人と正義派の両面の顔を持つ超やり手弁護士ですが、そこにローズ・バーン扮する若手女性スタッフやウイリアム・ハート扮する昔の恋人なぞとのえらい確執が絡んで、もはや何が正義で誰が悪か、誰が正義の味方で誰が悪人なのかわからんカオス状況に突入していく。グレン・クローズの灰色の瞳が象徴する人間存在の暗闇に、ペンライトひとつで侵入していく不気味さがたまりません。

猛烈に練りこまれた脚本もすごいが、時系列をあえて取り払ったアナーキーな演出が見る者の心理を揺さぶり、それがいっそうスリルとサスペンスを引き起こす仕掛けになっていましたが、もう続編はないのでしょうか。

最後に、私のいちばんお気に入りだった「サラリーマン・ネオ」をお蔵にした奴は誰だ。民放の笑いにもならないアホバカお笑い番組が氾濫するなか、あれには上質のユーモア、ウイット、批評精神が満載されていました。


♪N響、有働、山田アナ、私の嫌いなNHKもいっぱいあるでよ 茫洋